『24時間テレビ』で特集され、2014年はドラマにもなった『はなちゃんのみそ汁』。劇中で乳がんを患う母からみそ汁の作り方を教わった時には幼かったはなちゃんも小学6年生となった。九州大学で開講しているセミナー“自炊塾”ではこのたび、はなちゃんを講師に迎えてみそ汁の作り方を学んだ。学生たちは真剣に聞いており、休憩時間には「いつも(分量は)量っているの?」とはなちゃんに質問するなど交流も深まったようだ。
20代で乳がんを患った安武千恵さんは、娘のはなちゃんに5歳の時からみそ汁の作り方を教えた。千恵さんが家族のことなどを綴ったブログ『早寝早起き玄米生活』は千恵さんが2008年、33歳で亡くなった後も夫の信吾さんが続けている。ブログを基にした書籍『はなちゃんのみそ汁』は2014年8月30日放送の日本テレビ系列『24時間テレビ37「愛は地球を救う」』でドラマ化され、2015年秋には広末涼子が千恵さん、滝藤賢一が信吾さん役で映画化されることも決まっている。
現在、はなちゃんは小学校6年生となるが、今でも毎朝みそ汁を作るのが日課だ。1月19日放送の『NEWS5ちゃん』(FBS福岡放送)では、そのはなちゃんが九州大学のセミナーで講師を務めたことを取り上げた。
その日の朝も台所に立ってみそ汁を作ったはなちゃん。そうしていると「お母さんが横にいてくれる感じがする」そうだ。二日酔い気味のお父さんを気遣って「みそを少なめに」するほどみそ汁の腕も上がっている。
九州大学で開講されたセミナー『自炊塾』には、学生だけでなく一般の男女も参加していた。セミナーを受け持つ比良松准教授は「積極的な自炊に取り組んで、最終的には自炊が当たり前な人になることを目指す」と言う。
「今日は、はなちゃんと大学生でみそ汁を作ってもらおうと思います」と准教授がはなちゃんを紹介すると、拍手で迎えられた。はなちゃんはダシのとり方を「昆布は入れてから、沸騰する直前に火を弱めます」、「昆布のダシが一番出る温度は70度くらい」と説明。ダシをとる時に「フタをしたらダシが生臭くなる」とコツも語られた。
かつお節の削り方も指導するが、慣れない学生は削り器の刃にひっかかって、はなちゃんのように上手くいかない。「かつお節のダシが一番出るのは90度。火を止めて2分くらいそのままにします」とスムーズに説明するはなちゃん講師の言葉に、学生たちは真剣な眼差しで聞き入った。
休憩時間には、男子学生がはなちゃんに「みそ汁以外も作るの?」と話しかけるなど和やかな雰囲気だった。「いつも量ったりするの?」と質問すると、「だいたいです…」と返ってきた。彼は「やっぱり慣れか…」と苦笑すると「たぶん、主婦の皆さんよりもみそ汁に関しては上手なのではないかと思う」とはなちゃんの腕を認めていた。
父親の信吾さんは、はなちゃんが4年生の時に書いた作文で、締めくくりに『自分の命は自分で守る』と母・千恵さんとの約束を書いているのを見た時に「ちゃんと伝わっているんだなと思った」そうだ。千恵さんは「家族の台所から世界が変わる」ことを発信しようとしていた。その思いは、はなちゃんがしっかりと引き継いでおり、今や大学のセミナーを通して広げることとなったのだ。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)