海外発!Breaking News

writer : tinsight-yokote2

【海外発!Breaking News】まぶたが突然腫れる。米国で30万人が“新AIDS”ことシャーガス病に感染。

米国の医学界で“新AIDS”の異名すらとる、“シャーガス病”をご存じであろうか。そもそも非常に聞きなれない病名で、これを正しく診察できる医師の数が極めて少ないことも重症化する原因だそうだ。

現在、米・疾病予防管理センター(CDC)を悩ませているのはエボラ出血熱デング熱、そしてエンテロウイルスD68型による小児ウイルス性呼吸器疾患ばかりではなかった。米国では現在約30万人と、これまで聞き覚えのなかった“シャーガス病”という病気に感染する人が増えているという。

このほどニューオーリンズで、熱帯医学の専門家らによる『American Society of Tropical Medicine and Hygiene』という学会が開催され、そこで大きな注目を集めたのがこの“シャーガス(Chagas)病”であった。発症初期のうちに治療を開始した患者のほとんどが助かっている一方で、治療が遅れた者は心不全ほか致命的な合併症で命を落とすという事実に、特徴的な初期症状をすべての医療機関が把握し、正しく診断できるよう周知徹底をはかる重要性が叫ばれたという。

米・疾病予防管理センター(CDC)はこの病の原因を、“トリパノソーマ属の原虫クルーズトリパノソーマ。カメムシ亜目のサシガメが媒介となる”と特定している。サシガメは英語圏ではKissing Bugと呼ばれ、メキシコをはじめとする中南米に多く生息。土壁などに潜み、人の血を吸う上にクルーズトリパノソーマを多数含んだ糞を残す。人がその部分を掻くと体内に侵入すると説明しており、初期症状は発熱、疲労感、節々の痛み、胃腸症状など風邪に似ているが、皮膚の発疹、特にまぶたの紫がかった腫れがあったら要注意だとしている(画像は米・疾病予防管理センターが公開)。

またヒューストンの『ベイラー医科大学』で疫学研究を専門としているメリッサ・ノーラン・ガルシアさんは、このほど『The American Journal of Tropical Medicine and Hygiene』という熱帯医学の専門誌にこんな研究結果を報告し、注目を集めている。

「血中のクルーズトリパノソーマ抗体検査をしてみたところ、予想外に多くの人が陽性反応を示しましたが、もっと驚いたのは彼らが高率で心臓疾患を持っていることです。心臓の病気にクルーズトリパノソーマが関与している可能性があると言えそうです。」

「米国で患者数が多い理由は、体内に寄生虫を持った人々がそうと気づかないまま米国に移住したことが挙げられます。潜伏期間は数十年と長く、それまでまったく健康に過ごしていた人も一旦発症すると病状はどんどん深刻になるところが新AIDS、サイレントキラーなどと呼ばれる所以です。」

なおこの病気は米国大陸に限ったことではなく、アジア諸国でも注目されるようになっており、日本では数千人ほどの無症候性キャリアがいるという見方もあるようだ。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)