年に一度の映画の祭典『第27回東京国際映画祭』がいよいよ10月23日から開催される。今年は“SAMURAI(サムライ)”賞が新設され、北野武氏とティム・バートン氏が受賞するなど早くも話題になっているが、今年の“フェスティバル・ナビゲーター”を務めるのがタレントのハリー杉山だ。情報番組『ノンストップ!』(フジテレビ)のレギュラーとして「ハロハロ!」「ナイスワン!」のフレーズでお馴染みのハリーだが、実は大の映画好き。今回のインタビューでは映画の魅力について、そして自身と映画の関わりについて熱く熱く存分に語ってくれた。
──まず東京国際映画祭(TIFF)の“フェスティバル・ナビゲーター”に選ばれたお気持ちをお聞かせください。
ハリー:「僕でいいの?」「僕なんだ」「ものすごく光栄」、三段階でキメるとこんな感じでしたね。僕にとって映画というのは、人生にものすごく影響を与えてくれる素晴らしい存在です。その映画について話せる機会が与えられた上に、ナビゲーターは映画祭の“顔”ですから、僕にとっては夢の中の夢であり、仕事というよりも“極楽”ですね。TIFFを皆さんにもっと身近に感じてもらうのが僕の使命です。
──では、TIFFはどのような映画祭でしょうか。
ハリー:TIFFは今まで沢山の若手の監督に世界で輝くチャンスを与えました。これから世界を代表するクリエイター達の作品、そして監督や役者などと交流するチャンスを与えてくれるのがTIFFです。あとTIFFだけではなく、どんな映画祭でもハードルが高く、映画マニアや業界人しかいけないと思ってる人は意外と多いです。そんな事ないです。老若男女関係なく誰でも参加して感動できる機会なので、是非とも足を運んでいただきたいです。
■映画好きのルーツは母と観た『七人の侍』
──映画がとてもお好きなのが伝わってきました。何か映画が好きになるきっかけがあったのですか。
ハリー:子どもの頃、母親に銀座の地下の20席ぐらいの映画館へ、『七人の侍』『ドクトル・ジバゴ』『アラビアのロレンス』などを観に連れていかれました。ものすごく衝撃を受けました。『ドクトル・ジバゴ』は、ロシア革命の話ですが、15、16歳の子どもたちが機関銃で撃ち殺されていくシーンを今でも鮮明に覚えています。11歳までは日本にいたので、それまでは母親の影響で昔の映画もたくさん観ました。
──現在29歳のハリーさんがそのような映画を観ていらしたのは意外ですね。お母様はどうしてそのような作品をハリーさんに見せたのでしょうか。
ハリー:それはですね、子どものときは自分のアイデンティティは分からないし、(父がイギリス人、母が日本人の)僕はイギリス人か日本人かどちらなのかなと思っている中で、インターナショナルスクールに通っていたので自分は海外色が強まっていたと思います。『七人の侍』はおそらく日本の美徳や侍の文化を見せたかったのではないですかね。あとは単純にうちの“おかん”が“三船敏郎はいい男だ”ということを力説したかったのではないかと(笑)。そして『アラビアのロレンス』では肌の色が違ってもロレンスが現地の人と仲良くなっていく姿を観ました。その後、僕はイギリスに渡ったので、僕の心をオープンにさせるきっかけを母は作ろうとしたのではないでしょうか。
■人生のターニングポイントで映画が教えてくれたこと
──なるほど。これまでに映画からいろいろな影響を受けてこられたのですね。
ハリー:そうですね。自分の人生のターニングポイントで指針をもらった作品がいくつかあります。その中のひとつですが、『炎のランナー』では人種差別というテーマがあるんですが、僕もロンドンにいたときそれを感じていました。僕にはちょっとしたコンプレックスが10代の頃にあって、自分は何を信じればいいのかな、自分は何をすればいいのかなと悩んでいたときに、“自分の信じることをとことんまっとうするべきだ”というメッセージをこの映画からもらいました。自分に自信をくれた映画です。TIFFの作品が、皆さんの人生のターニングポイントになってもらえたらいいですね。
■30歳を機に映画に出演したい
──それだけ映画がお好きですと、ご自身で出演されたいと思いませんか。
ハリー:それはもちろん思いますよ。僕は感受性がものすごく強いんですが、表現力という点ではそれを形にできるのか不安ですね。(現在している)情報を消化して伝達するだけでなく、自分が(表現者として)そのままストレートに喜怒哀楽を伝えるというのは、いつか必ず通る道だと思っています。子どもの頃からずっとやりたかったのですが、30歳を迎える新たなステップとして考えています。
──これまでさまざまな国に触れてきたハリーさんですが、映画祭を東京で開催するということについては、どう感じていらっしゃいますか。
ハリー:先週イギリスに行って、母校で話をする機会がありました。驚いたのは、12人の生徒のうち10人が日本に来たことがあったことです。今、日本は外国から来る人がどんどん増えていて、東京オリンピックが開催される2020年には2,000万人になるのではないかとも言われています。海外からの日本への興味は相撲、アニメ、忍者だけでなく、どんどん(いろいろなジャンルで)日本を求めていると思います。TIFFは世界に東京、いや日本の存在をさらに理解していただく素晴らしい機会だと思います。
■“まっぱ”になって感じてほしい
──最後にTIFF“フェスティバル・ナビゲーター”のハリーさんから読者の皆さんへメッセージをお願いします。
ハリー:映画は究極の喜怒哀楽を味あわせてくれるものです。今回のTIFFのアゼルバイジャンの作品『ナバット』を観ても、香りなど五感が伝わってくる作品で、すごくリアルなんですよ。肌で感じることができるんです。それを自分の人生の燃料として、たとえば自分にとって大切な人とどういう風に触れ合うかとか、人生をどういう風に歩んでいくべきかとか、自分を変えさせてくれる作品がたくさんあります。皆さんにも、変な先入観を持たないで、“まっぱ”になって感じてほしいです。
映画について語るハリーは次から次へと言葉がどんどんあふれ出てくる。当初のインタビュー予定時間を過ぎても語りつくせず延長して話を聞かせてくれたが、時間があれば一晩中でも語り続けてくれたのではと思うほどだ。「2020年の東京オリンピックのときには、その感動を伝えられる最前線にいたい」と目を輝かせたハリー。この情熱をもってすればオリンピックの感動も喜怒哀楽も私たちはハリーからダイレクトに受け取れるに違いない。まずはハリーが「究極の喜怒哀楽」と評した映画という“世界中からの贈り物”を、心をまっさらにして観てみたい。
■第27回東京国際映画祭 開催概要
期間: 2014年10月23日(木)~10月31日(金) 9日間
開催会場: TOHOシネマズ 六本木ヒルズ 、TOHOシネマズ日本橋、歌舞伎座
公式サイト: http://2014.tiff-jp.net/ja/
(TechinsightJapan編集部 関原りあん)