環太平洋経済連携協定(TPP)の参加国になることで工業製品や農作物などの関税がどうなるか注目されているが、経済だけでなく文化面でも大きな影響が出そうだ。テレビ番組『たけしのニッポンのミカタ!』でTPPについて議論した中で、コスプレが安易にできなくなる可能性があることが分かった。そうなった場合として、出演していたものまね芸人のキンタロー。が例に挙げられたが、「絶対ダメじゃん!」と共演者たちから指摘され困惑していた。
4月20日にTPP閣僚会合が交渉参加を承認したことで、日本も7月の交渉会合に合流する予定だ。7月12日の『たけしのニッポンのミカタ!』では、“知らないと怖い…TPP加盟は善か!?悪か!?”というテーマでゲストに経済評論家の上念司氏とお笑い芸人のキンタロー。を迎えて議論が行われた。
TPPに加盟することでメリット・デメリットは様々だが、特に日本の場合は大国アメリカの圧力が影響してくる。外交ジャーナリストの手嶋龍一氏は「TPPはもともと中国の動向をにらんで経済と東アジア太平洋の安全保障が表裏一体となっている。日本がTPPに後ろ向きな姿勢を見せると、米国から尖閣諸島問題について『中国との対応は日本独自でやれ』と言われかねない」とVTRで見解を語った。
そのような背景もあり、TPPに加盟すると米国が日本に要求してくる内容には「食品の原材料の表示に“遺伝子組み換え”を明示するな」といった食の安全性に関わるものから、「サメからヒレを切り取ってフカヒレにするな」という主旨のものもあるという。関税だけでなく、日本が培ってきた伝統や考え方にも口を出してくる可能性があるのだ。「歴史や文化の違う国を1つの価値観で統一するグローバリズムはおかしい」という意見もあった。
特に文化では、「TPPに加盟すると“モノマネ”ができなくなる」と警鐘をならす者もいるのだ。弁護士の福井健策氏は「TPPで米国は著作権保護のルールを大幅に変えるように日本に求めている。アメリカ型にそろえなさいということ」と解説している。ハリウッド映画やディズニーアニメなどをはじめとして著作権を手厚く保護する米国に対して、日本ではまだまだ著作権についてあいまいな状況にあるのだ。
もし米国並みに著作権を保護することになると、キンタロー。の場合は「口マネ」や「仕草のマネ」については著作権侵害にあたらないが、「AKB48の振付け」や「AKB48に似た衣装を着る“コスプレ”」は著作権侵害となる可能性が高い。しかも前田敦子やAKB48側がキンタロー。を訴えなくとも、AKBファンが告発することができるようになるという。
その話を聞いて番組レギュラーの国分太一が「絶対にダメじゃん!」と指摘すると、キンタロー。も「ブログが炎上したこともあるし…」とAKBファンから告発されることを心配していた。万が一これが現実になると、他にも『機動戦士ガンダム』の主人公アムロ・レイのモノマネで知られる若井おさむなど、困る芸人が少なくない。
上念司氏はこの件について、「ただし、米国が主張しても他の加盟国がそれを認めるかは分からない」と補足していた。そのTPPの第18回交渉会合が7月15日~25日の間、マレーシアのボルネオ島北部コタキナバルで開かれる。日本も参加承認手続きが終わって23日の午後から初めて交渉に参加することになる。関税や食の安全に関する動向が注目されるが、著作権についても気になるところだ。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)