村上龍氏と村上春樹氏は、同じ60年代に青春期を迎えながらも全く異なる作風で日本の文壇を牽引する作家である。春樹氏とはかつて共著を出版し、若い頃には海外で食事をともにするなどの交流があったという龍氏が、春樹氏の作品についてその人気の秘密を分析した。
6月30日放送の『爆笑問題の日曜サンデー』(TBSラジオ)にゲスト出演した小説家・村上龍氏。彼は日本の文壇を代表する作家として並び称される春樹氏の人気を分析した。
龍氏は「最近の(春樹)作品は読んでいないが」と断りを入れた上で、その最大の魅力は“自意識の揺れ”だと語る。春樹作品は、皆が持つような「自分はあの時あの判断をして良かったんだろうか」というような“答えがでない悩み”を題材にして描いている。このような悩みは人間にとって“一般的な悩み”であり、ゆえに世界中の人々の共感を呼び魅了し続けているというのだ。
しかし、龍氏としては「“自意識の揺れ”よりも、その“自意識の揺れ”を吹き飛ばしてくれるものが好き」だという。
一方、番組MCの爆笑問題・太田光は春樹作品に対して過去に「(登場人物が)涼しげに思わせぶりなことを言うだけでちっとも感情的じゃない」と批判的な発言をしている。太田は、龍氏の言う“自意識の揺れ”は「若者らしい悩み」と表現し、この悩みに対して疾走感をもってもがき続ける龍氏の作品の方に共感を覚えると語った。
龍氏は、春樹氏のことを「お互いに違うタイプ」と認識していたと話す。「小説家はそれぞれ自立してるので、春樹さんみたいな人がいたほうが良い」と、現代日本の文学界で双璧をなす相手への胸のうちを明かした。
(TechinsightJapan編集部 佐々木直まる)