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東日本大震災から2年となる3月11日。テレビ番組『徹子の部屋』に“反省猿”の芸でブレイクした村崎太郎と4代目の次郎が出演した。彼らは2年前の4月11日から被災地に入り、2年間訪問を続けて猿まわしを見せている。太郎はこの2年間で体験して感じたことを語ってくれた。
太郎の膝の上に猿の次郎が手をつく「反省」のポーズがウケてCMにまでなり、大ブレイクしたのは1988年のことだ。今では“反省猿”と聞いても知らない世代も多いが、太郎と次郎は伝統芸の猿まわしを日本だけでなく海外でも披露している。
今年の3月11日に放送された『徹子の部屋』には、その村崎太郎と4代目の次郎が出演した。同番組には10回目の出演となる太郎と次郎だが、実は代替わりしており“反省猿”でブレイクした2代目次郎が1990年頃から出演してきたが2007年頃には3代目次郎が出演、2009年に今の4代目が出演している。
2011年3月11日に発生した東日本大震災。その1か月後の4月11日から太郎と4代目次郎は被災地に入った。「本来、旅好きで1年の3分の2は家を空けている。そんな性格じゃないと猿まわしはつとまらない」という太郎だが、この時ばかりは1週間ほどで「旅をしてきて初めてもう居たくない、帰りたいと思った」と目にした惨状に心を痛めたことを明かす。
一番印象に残ったのは、ある小学校を訪れた時だった。地元の関係者から「子どもたちも沈んでいるので、(太郎に)失礼になるかもしれない」と断られたが、なんとか頼み込んで猿まわしをさせてもらった。体育館に子どもたちが集まっていると聞いたが、物音ひとつ無い。まだ誰も来ていないのではと思いながら舞台に出ると、子どもたちはいるものの“シーン”としている状況だ。
普通ならば「あっ、猿だっ!」と反応を示すところだ。黙って見ている子どもたちの前で猿まわしを始めると、やがて少しずつ笑顔が出てきた。最後には「バイバーイ!」と手を振って、元気な子どもらしい姿に戻ってくれたのだ。その時、太郎は「被災地訪問をやる意味はあるんだ」と確信したのである。
それから2年間、彼らは被災地訪問を続けていく。本来が大道芸である猿まわしだけに、ある時は仮設住宅前の広場で、ある時は車の整理をしながら道端で芸を披露した。太郎が「震災から3か月が過ぎた頃から皆さんに笑顔が戻った」というと、まだ3か月でそうした状況だったことに黒柳徹子は驚いていた。
「皆さんが『命があるだけでも幸せだ』という心境で、逆に『太郎さん、あんたが被災者みたいやないの!』と発破をかけられた」と彼は話す。「でも、ふと寂しそうな悲しい顔をされるのが辛かった」と人々の心の傷の深さを思うと、「次郎はいいですよ! 行くだけで皆さん笑顔になるから」と相方を羨んでいた。
黒柳から「2年間も回るといろいろなことを感じたのでは?」と尋ねられた太郎は、「被災地に入って『頑張ってください』と言っている私は、頑張っているだろうか?」と考えさせられたという。「自分だっていろんなことを諦めているのではないか?」そう思うと逆に、日本人として頑張らなければならないことに気づくのだ。「実は被災地の皆さんに“教えていただいている”という気持ちなんです」と彼は語った。
太郎と次郎のように被災地訪問を続けている著名人にAKB48がいる。彼女たちもまた被災地を訪問した感想を「私たちが元気をもらっている感じ」と話すことが多いのだ。被災地復興を進めることは、それに関わる人々の心を救うことでもあるのかもしれない。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)