かつて多くのトレンディドラマで活躍した三上博史。すっかりベテランの風格が漂う三上がまだ10代の頃、映画に初めて主演したときの稽古の様子について語った。まだ俳優業について何もしらなかった彼にとって、その稽古はかなりつらいものであった。
『スタジオパークからこんにちは』(NHK)に出演した俳優の三上博史が、デビュー当時の壮絶な稽古のエピソードを告白した。裸で殴られるという耳を疑うようなその“稽古”。当然、当時の三上も疑問を持ちながら取り組んでいたというのだが。
三上のデビュー作品は、寺山修司の映画『草迷宮』である。この映画の主役オーディションに受かったのだ。それまで芝居の勉強もしたことがなかった三上のために、寺山主宰の劇団「天井桟敷」のメンバーがワークショップをしてくれたという。ワークショップと言っても“一人いじめ”だったというその内容は凄まじいものであった。
突然、服を脱いでと言われ、素っ裸になった三上はそのまま正座をさせられたという。「“罵倒”の訓練をするから一言何か言って相手(劇団員)のことを殴れ」と言われ、小さな声で「バカ野郎」と言って相手を殴ったそうだ。すると相手は「このクソ坊主」と言って思い切り殴り返してきた。三上は飛ばされ、思いっきり鼻血が出てきたという。これを延々と続けさせられた彼は、何の訓練なのだろうと疑問に思いながら稽古を続けていたようだ。さらに、素っ裸のまま肉体訓練もさせられたらしい。こんなことをひと月半もさせられていたため、「今では何をやっても怖くない」、「何をさせられても恥ずかしくなくなった」と精神面でかなり鍛えられたと語っていた。
今でもなぜ素っ裸で稽古をさせられていたのか疑問が残るが、三上の言うように精神面が鍛えられたことは確かなようだ。そう考えると、『あなただけ見えない』での女性の人格を含む三重人格の役や、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』での同性愛者役など奇抜な役を好演している三上の演技力は、この時に鍛えられたものなのかもしれない。若き日のつらい稽古があるからこそ、今でも俳優として確固たる地位を築いているのだろう。この頃の経験は、三上の心の財産になっているに違いない。
(TechinsightJapan編集部 瑛里)