今クールの“月9”は、香里奈、吉高由里子、AKB48大島優子とずらりと旬の美人を揃えてきた。視聴者としてはそれなりの華やかさを期待したドラマだったが、実際ここまで見る限り、男っ気も華もない少し残念な内容となっている。現代の独身女性の半数以上が「今、恋人がいない」という。ドラマによれば、30代女性のおよそ70%に恋人がいない、新成人の80%に恋人がいないなどのデータがあり、恋愛しない理由を聞くと「傷つくから」「面倒くさいから」「無理したくないから」と消極的な意見が目立つようだ。そんな恋愛に不器用な女性が奮闘する姿を描いているのが、今クールの月9『私が恋愛できない理由』(フジテレビ系)である。
高校の演劇部の先輩、後輩でルームシェアすることになった藤井恵美(27歳・香里奈)、小倉咲(24歳・吉高)、半沢真子(22歳・大島)。恵美は男勝りなサバサバした性格だが、昔少しだけつき合った親友の長谷川優(田中圭)が忘れられずにいた。咲は本当の愛を探して様々な男性とつき合う就活生。真子は重いと煙たがれてしまう女性。そんな彼女たちが一念発起し、幸せな恋愛をしようと決意する。
三者三様、それぞれの性格、問題点がはっきりしていて分かりやすい。現代女性が抱える問題点と照らし合わせながら進められるが、中でも一番現代女性の象徴と言えるのが香里奈演じる恵美だ。彼女ほど男勝りではないにしろ、元彼を忘れられず「出会いがない」「面倒くさい」などを理由に自分が傷つきたくないという恵美の姿に自分を重ねる人も多いのではないだろうか。自分のことのようで少し胸が痛くなったり(決してトキメキで痛いわけではない)、恵美が恋愛に臆病になっている姿を見て、だらけている自分を慰めてしまいたくなるようなリアルさがある。恋愛したくないわけではない、けれどそれを責められたくない。そんな複雑な心情が上手く描かれている。
「重い」と言われてしまう恋愛初心者である真子に共感する人も多いのではないだろうか。真子は都合のいい女にもなれないそれ以前の女なのだが、男にコロっと騙されやすい女性を象徴している。そんな真子のスカート丈が毎回短すぎる気がするのは、AKBファンへのサービスなのだろうか。箱入り娘として育った真子なら膝丈のスカートしかはかないイメージなのだが、それは古いということなのか。
吉高演じる咲は男をその気に出来ても、自身が本気になれない恋愛上級者だ。なかなか上手くいかない就活と恋愛に揺れ動く咲を吉高が好演している。というより、彼女の小悪魔性がここぞとばかりに発揮されている。素なのではないかと思うほどの魔性ぶりである。共感出来る女性が一番少ないキャラクターかもしれないが、彼女のアドバイスは的確かつとても参考になるので、重要なポジションだ。そんなとてもバランスの取れた3人に加えて、結婚生活に陰りを感じている恵美の上司の妻であり、取引先の社長でもある白石美鈴(39歳・稲森いずみ)も加わり、様々な角度から恋愛を見ていく。
このドラマを見ていてなぜか昔、同局で放送された山口智子主演の『29歳のクリスマス』を思い出した。それぞれが恋愛に奮闘する姿やサバサバした空気感が似ているように感じたのだろう。冒頭にも書いた出演者に対し内容に「華」がないという部分も似ている気がする。そのせいかラストは恋愛が成就してラブラブな3人の姿ではなく、3人とも独り身で3人で楽しく過ごすようなシーンが目に浮かんでしまう。たとえそうだとしても、この3人ならなんらかの希望を与えてくれる気がするので、今後の3人の奮闘ぶりを楽しみにしたいところである。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)