松嶋菜々子の連続ドラマ復帰作『家政婦のミタ』(日本テレビ系)が20%代と高視聴率をキープしている。前回第6話ではさらに伸ばし23.4%をたたき出した。
母親を亡くした阿須田家に派遣された家政婦の三田灯(松嶋)。彼女は言われたことは完璧にこなすが、ニコリとも笑わないミステリアスな雰囲気を持っていた。そんな彼女と崩壊寸前の家族の様子を描いている。
タイトルに騙されて、市原悦子のような家政婦が派遣先で首を突っ込むような気楽なものとは全く違い、戸惑った人も多いのではないだろうか。しかも、毎回ラストはほんわか和ませて「家族っていいな」で終わるようなものではない。簡単に割り切ることの出来ない問題に直面した子どもたちが、どのように乗り越えていくのか難しい内容だ。
三田をはじめ、このドラマの根底にある問題も暗く重い。それなのに絶望感はない。だからといってクスリと笑える救いがあるわけではない。阿須田家の子どもたちは、死んだ母親は事故死ではなく父・恵一(長谷川博己)の不倫が原因で、自分も子どもたちを愛しているのか分からないと告げられる。大人と見て対等に扱っているという見方が出来るかもしれないが、実の父親にそのようなことを言われるのは幾つだろうが耐えきれない。それをまだ高校生の子どもが受け止めて、あそこまでしっかりしていられるのは見上げたものだが、少し発言が安易に感じてしまうところもある。それは子どもたちに何も言い返せず、言いなりになるしかない父親がそう見せてしまっているのかもしれない。子どもに「出て行け」と言われて簡単に出て行く父親に、ままごとではないのだからとイライラする。
どこまでも煮え切らない父親・恵一役をドラマ『鈴木先生』で教師役を演じた長谷川が、長女だからしっかりしようとするもなかなか上手く振る舞えない結役を忽那汐里が演じている。この難しい二人の距離感を絶妙なバランスで上手く演じられている。
一方で無表情な松嶋がこれほどまでに不気味だとは思いもよらなかったが、その大半は演出のせいかもしれない。ホラーものによくある効果音を使用し、何か良くないことが起きるのではと思わせる。そして三田の感情のない話し方と業務であれば人殺しすらしようとする不気味さがドラマ全体に暗雲をもたらしている。前回の放送で、三田が結から自分を殺して欲しいと頼まれ、追いかけ回すシーンがあった。そこでの三田の神出鬼没さは人間の動きではなく、もはやホラーの域に達していた。
ドラマも折り返しを迎え、おしゃべりな紹介所の所長・晴海明美(白川由美)のおかげもあって徐々に明らかになっていく三田の秘密。阿須田家の問題とともに核心に迫っていく今後の展開も気になるところではあるが、三田が持つ四次元ポケットのようになんでも出てくるボストンバッグの謎にも迫って欲しいものである。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)