実写化の中でも異質ではないかと思われる『名探偵コナン 工藤新一への挑戦状』(日本テレビ系)。原作、アニメでの主人公である小学生姿の江戸川コナンではなく、あえて本来の姿である工藤新一で実写化した意味はあるのだろうか。放送開始前からのこの疑問は結末を目前にしても“謎”のままだ。ドラマに出てくるキャラクターも新一、毛利蘭、毛利小五郎、鈴木園子、高木巡査部長くらいで『コナン』という名前を残してまで、ドラマ化した意味が未だ見えてこないのだ。
白い部屋に閉じ込められた高校生名探偵の新一(溝端淳平)、幼なじみの蘭(忽那汐里)、そして蘭の父親で探偵の小五郎(陣内孝則)がその部屋から脱出するために、見えない犯人が出す問題の答えとなるキーワードを導いていく。そのキーワードに関連する事件を回想するという原作とは全く関係のない流れとなっている。これだけならむしろ内容はこのままでキャラクターを変えたミステリードラマで充分だったのではないだろうか。新一がコナンになる前の話だと言われても、それでファンは納得するであろうか。いや、そんなレベルの話ではない。これにはコナンファンもがっかりである。
新一役の溝端が新一に似ているわけでもない。過去に3回SPドラマ化されている(うち2回小栗旬主演)が、連ドラにするほど溝端の新一が良かったとも思えない。二枚目を気取るあまり機械的に動いているように見えることもしばしば。強いて言うなら、今回から前髪を切った忽那汐里の方が蘭に似ているかもと思える程度だ。話の中の建物の名称は原作やアニメと同じため、聞くと「おぉっ」と自分のご近所がテレビに取り上げられたような気分になってしまうのは記者だけだろうか。
そもそも原作でも、たまにしか新一の姿を見ることはできない。だからこそ、ドラマもたまに放送されるSPドラマだからちょうど良かったのだ。それを「コナンの姿になる前の話」だとして連ドラにすること自体にも無理があるし、登場するキャラクターが限られてしまう。これでは、原作やアニメの良さを出すことが出来ないではないか。
前回の放送では最終回を目前に衝撃の展開となるはずだったが、なぜか盛り上がりに欠けた。それもこれも見る側のモチベーションの低下が原因であろう。あの展開を見て、「コナン」の名前を残してまでこのドラマを作る意味があったのか、やはり疑問でならない。このまま、「なぜ実写化したのか?」という“謎”に対する「たった一つの真実」を見つけられずに最終回を迎えてしまうのか。ぜひとも最終回でこのドラマ最大の謎解きを見せてほしい。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)