今回の【ドラマの女王】は、佐々木蔵之介主演『チャレンジド』(NHK)。病気で視力を失った教師が、苦難を乗り越えて再び教壇に立ち、生徒たちに人を愛することの大切さを教えていくヒューマンドラマ。ハンディキャップを持つ人が社会に適応する難しさと、教師という仕事への情熱。両方を渡邉睦月が完全オリジナル脚本で綴る。主演の佐々木はこのところ悪役ばかりだった様な気がするが、さすが爬虫類系。前のドラマからカメレオンのように見事新たな役に擬態した。
熱血教師の塙啓一郎(佐々木蔵之介)は盲目というハンデを抱えても教師をあきらめず、妻の幸江(富田靖子)や、中学校の校長である花村(西郷輝彦)ら周囲の協力を得て復職を果たす。だが、啓一郎を受け入れることに反対する教師も多く、不手際の連続の授業は、“受験に差し障る”と生徒の反応もいまいち。盲導犬のポン太に手ぬぐいを巻くイタズラをする生徒まで現れる。副担任の新谷京子(村川絵梨)も反発から啓一郎に非協力だ。
なんとかしなければと、生徒ひとりひとりの言葉の“くせ”を覚え、しだいに授業を工夫していく啓一郎。テスト用紙を川に流してしまった一件で、新谷ともうちとけ、生徒達の協力も得て、授業がちゃんと進むようになる。しかし、陸上部の生徒、秀彦(竹内寿)と保護者の里子(七瀬なつみ)だけは、唯一啓一郎を理解しない。啓一郎は秀彦とランニングをし、秀彦の家庭にも悩みがあることを知る。
前向きで心が広く、頼りがいのある先生を佐々木蔵之介が好演。『オルトロスの犬』(TBS系)の悪科学者や、映画『守護天使』のオールバックのチンピラと同じ人とは思えない爽やかさ。さすが、カメレオン役者。
盲目の啓一郎が学校にいる事で、誰かをサポートする気持ちと結束力が生まれ、学校のさまざまな事が「良い方向へ」変わっていく。見た後、憑き物が落ちたように気持ちの軽くなるドラマだ。温かく啓一郎を包む妻役の富田靖子や、校長の西郷輝彦、反発教師の田中実、理解のある教師役の川平慈英やくわばたりえもドラマに華を添える。
連続5回のいよいよ大詰め、第四話は、修学旅行に同行する啓一郎。旅先で、女生徒へのいじめが発覚する。持ち前の情熱で子どもたちの心の闇に踏み込めるか。舞台『中国の不思議な役人』でスリリングな演技を見せてくれた夏未エレナの不安定な学級委員の女生徒も見逃せない。
(TechinsightJapan編集部 クリスタルたまき)