先日、チェンマイ県オームゴイ郡ナーギアン村に住むカレン族が100年以上継承してきた田起こしの方法を披露するイベントが開催された。
オームゴイ郡ナーギアン村に住むカレン族が100年以上続けてきたという、田んぼを耕す方法。それは、象に田んぼを歩かせることによって田を掘り返すというものである。
この方法は、いくら象が有名なタイといえども、国内においてこの村でしか見受けられないという。よって、毎年、伝統的なこの方法をより多くの人々に知ってもらおうと、イベントが開催されるのである。
イベントは、同県のナイファン村にて、オームゴイ郡の郡長や元郡長(現在タイ南部の境界県を管轄する長官)、チェンマイ県副県長、チェンマイ駐在のドイツの名誉領事、ナイファン村の有力者などを中心に、地域住民が主体となって開催された。
イベントには象2頭が用意され、その象に元郡長およびドイツ名誉領事館が乗って、田んぼを耕す様子が実演された。カレン族に先導された2頭の象の歩行によって田んぼが掘り起こされていったのである。そして、その後に4種類の米が植えられたのだ。
また、1頭の象にはカレン族の民族衣装をモチーフにした衣装が着せられるとともに、メイクも施された。観客は象の愛くるしい姿に歓声をあげ、現在タイで話題を集めているパンダの赤ちゃんにも負けてないと、もて囃したという。
元郡長の話によると、人里離れた山奥にあるナーギアン村で長年継承されてきた田起こしの方法は、これまで、その村の立地ゆえに他の地域の人々に知られることがなかった。よって、今後もこのイベントを続けて、より多くの人々にカレン族のもつ伝統的な田起こしの方法を知ってもらいたいとしている。
人里離れた村において継承されてきた一民族のもつ文化を、より多くの人々に伝えるために、地域住民が主体的にこのイベントを開催していることがうかがえる。世界の様々な民族が徐々になくなりつつある現状において、こうした伝統的な生活様式や知のあり方を披露する場を主体的に立ち上げようとする地域住民の姿勢や意識は、今後ますます重要な意義をもつことになるであろう。
(TechinsightJapan編集部 若曽根了太)