「整いました~ ねづっちですっ」で売り出し中のお笑いコンビ、Wコロンがコンビを結成したのは2004年のことだった。その頃は今のようにテレビ出演もなく営業がほとんどだった彼らに、ある日プロレス団体からオファーが来たのだ。
プロレスもエンターテイメント性を出すため「ハッスル」がレイザーラモンやインリン、最近では「MAP」が浅香光代を起用するなどという例もある。
Wコロンもそのパターンかと思われたが「ZERO1-MAX」がWコロンにオファーしてきたのはプロレスではなく、漫才だった。彼らは毎年開催される「靖国神社奉納プロレス」の試合の間で漫才をすることになったのである。
Wコロンは6月25日の「ごきげんよう」でその時の様子を語った。当日のカードの中でも人気のある佐々木健介選手の試合で観客は最高に盛り上がっていた。その試合の後で彼らの出番が来たのだ。リングアナウンサーはプロレス独特の呼び込みで「え、ここからはっ、エンターテイメントコーナーとなります! それではっ、スペシャルゲストの入場!」と観客をアオッたのだ。何者が出てくるのかと期待が高まる中、Wコロンの二人が登場してきた。案の定、全く反応が無くネタもウケずにブーイングの嵐だ。「負け犬の気持ちですよ」と二人はその時を振り返った。漫才を終えて花道を引き上げる彼らを無情にもピンスポットが追いかけてきたのだ。するとうなだれる彼らに観客から声がかかった「こんなんで、めげんなよ。いつかいいこともあるさ!」と。これまでも敗れたレスラーを見てきたからだろう、敗者の気持ちが分かる者もいるのだ。
その日、ねづっちが一人で電車に乗って帰路に就いた時だ。同じ車両にプロレスを観戦したらしい親子が乗っていた。「お父さん、Wコロンがいるよ」と子どもが父親に囁くのが聞こえた。すると父親が「今は、話しかけちゃいけないよ」とそっと諭したのだ。その会話を聞いてねづっちは「総武線で涙がとまらなくなった」という。
そうして終えた初めてのプロレス体験だったが、なんと翌年も同じオファーが来たのである。今度こそリベンジだと意気込んで臨んだ彼らだったが、気を利かせたプロレス側のスタッフが登場シーンで流したのが当時人気絶頂だったレイザーラモンHGのテーマ曲だったからいけなかった。期待する観客は彼らが登場すると「なんだWコロンかよ」とガッカリしてしまった。またも負け犬の気持ちで花道を帰る彼らは「去年より伸びてるぞ!」の声援をもらい、少し元気になったのだった。
そして、なんとその翌年もオファーはやってきた。次はやはり人気のあった長州小力が使うテーマが流れたのである。今度は観客も覚えているようで「どうせWコロンだろ?」と冷たいながらも反応があったという。漫才はやはりさほどウケずにまた花道を帰っていると「もうこなくていいぞ」と言われたのだ。以来、オファーはこなくなったのである。
“ネタ的”な部分もあるのかもしれないがWコロンが今後「即興なぞかけ」以外にも我々を楽しませてくれることを予感させるエピソードであった。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)