エンタがビタミン

writer : techinsight

【エンタがビタミン♪】「あいつを出すな」張本VS江川、番組私物化にあがなえないTBSの3つの大罪。

今、Twitter上で、あるジャーナリストの発言が論議を呼んでいる。それは、18日正午のことだった。ジャーナリストの江川紹子氏が自身のTwitterアカウント上で、次のようなつぶやきを発信した。

「出演予定だった6月20日のサンデーモーニングにできなくなりました。5月23日の放送での私の言動について、張本勲氏が立腹し、江川を番組に出さないようTBS側に求めたためです。TBSは、張本氏の主張を受け入れ、私を出さない、と決めました。7月も同様の理由で出演できません。詳細は後で」
…この突然の告白に、Twitter上では一時”炎上”騒ぎになった。さらに、江川氏は間髪いれずに事の詳細をTwitter上で暴露していった。

その内容をまとめると、事の発端は先月23日の放送でのやり取りだ。いつものようにご意見番として出演した野球解説者の張本勲氏が、楽天の岩隈久志投手に「喝」を入れ、「エースとしてマウンドを守るべき。途中降板は無責任」などと断じたのに対し、江川氏が「えーっ」と不満を漏らした。これが、張本氏の癪に障ったようで、放送終了後に張本氏から番組スタッフに「江川を番組に出すな。江川が6月20日の放送に出演するなら自分は今後番組に出ない」とクレーム。これをTBS側が呑んだというものだ。

江川氏の主張によると、TBSは当初江川氏に対して無期限休養を提案。それに江川氏が同調しなかったところ、今月と来月の2ヶ月間休養してほしいと要請があったという。また、江川氏は張本氏への謝罪や、スポーツコーナーのみの退席をTBS側に提言したものの、TBSサイドは「張本氏は江川氏との同席を拒んでいるのでなく番組全編への出演見送りを要求している」の一点張りだったという。

さらに江川氏は、「実は、張本氏が『江川を出すな』と要求されたのは、これが2度目」と暴露。時期については明言しなかったものの、最初に要求された時は司会を務める関口宏氏が両者の仲を取り持ち、事なきを得たという。しかし今回は、関口氏が何を言っても張本氏が譲らなかったようだ。

これに対して、ネット上では賛否両論が飛び交っているが、おおむね江川氏を擁護する発言が多いようである。江川氏に対して「偉業を残したプロの野球解説者に対して素人が口を出すから怒りを買った」というバッシングもあるが、これに対して江川氏は「普通に発言をしたり普通のリアクションしたりしただけ」「岩隈さんについて、あまりの言いようだったので、ついファンとしてリアクションしてしまいました」と反論している。

今回の騒動に対して、TBS広報部および「サンデーモーニング」は今のところ公式のコメントを発表していないが、一部マスコミの取材に対しては「今回の措置は2人が積極的に気持ちよく出演していただけるためのもの。出演に関しては今後も話し合いを続けていく」とコメントしている。また、当事者の一方である張本氏は今のところ、沈黙を守っている。

騒動に至る経緯を中立的に見る上で、江川氏のコメントのみで総括することは避けなければならないが、しかし現時点においてTBSは三つの大きな過ちを犯している。

一つは、張本氏の要求を認めて江川氏の出演を見送ったことだ。これは「一出演者による番組の私物化」といって相違ないだろう。まして「サンデーモーニング」は報道番組であり、スポーツコーナーと言えども中立的かつ多角的な報道が求められるのではないか。それを、江川氏の言い分ではあるが「一方の出演者が気に食わないと言っているから降板してくれ」という要求をそのまま受け入れてしまうのは、報道番組を制作しているという自覚に欠ける、由々しき行為である。

もう一つは、こうした騒動をこれまで長年にわたって当該番組に出演していた江川氏自身によって暴露されてしまったことだ。「サンデーモーニング」は1987年から続く長寿番組だが、息の長い番組は出演者に愛されてこそ続くというのがセオリーだ。しかし今回、江川氏はTwitter上で「非常に落胆している」とコメント。愛のムチとの見方もできるが、長年コメンテーターとして出演していた江川氏にこのような発言をさせたTBSに落ち度がないとは言えないだろう。江川氏は出演見合わせの経緯を暴露した理由について「これで私が黙っていれば、次にまた同じようなことが起きかねない、と思ったから」とコメントしているが、こうした裏事情を暴露されてしまったのも、「サンデーモーニング」スタッフの対応の甘さゆえだ。

さらに忘れてはならないのは、TBSは報道機関としての自覚に欠けるようなミスを度々犯し、視聴者をないがしろにしているということだ。今年に入ってからだけでも、3月に高校無償化に際して、関西大学教授のコメントに発言の真逆となる内容のテロップを乗せて放送したり、4月に巨人の木村拓也コーチがグラウンドで倒れた際、意識不明であるにも関わらず「急死」と速報したり、さらには5月に「赤松農水相が外遊中に海外でゴルフをしていた」と裏付けが不十分のまま報道するなど、誤報やテロップミスを連発している。

「サンデーモーニング」でも、2003年に石原慎太郎都知事の発言を意図的な編集とテロップミスにより真逆の内容に捏造したとして、石原知事から名誉棄損で刑事告訴されている。不祥事がいつまでも続く中で起きた今回の騒動には、ネット上でも「またTBSか」という声が多く挙がっている。

江川氏はTwitter上で「サンデーモーニングはTBS報道局の番組です。話し合いの中で、私は『TBS報道局にとって、何が大事な価値観か、よく考えて欲しい』と述べてきました。その結果が、これです。非常に落胆しています」と心の内を語っている。TBSの報道機関としての自覚とそれに見合う対応が、果たして今後見られるのか。今こそ、TBSの真価が問われている。
(TechinsightJapan編集部 鈴木亮介)