インターネットの利用方法で最も一般的なのは、気になるキーワードを検索してヒットしたサイトを閲覧しながら、そこにあるリンクを辿って関心の連鎖を広げていくというものであろう。
現在はキーワードを入れれば、それに関連する人気キーワードがサジェストされるので、「自分が何を知りたいか」を検索エンジンがある程度教えてくれる。
しかし、今般、電通が公開した実験版システム「gururin」は、話題・人気のサイトをザッピングしながら閲覧するというものだ。これは能動的検索を是とするインターネットの思想に真っ向から対立する試みと言える。
能動的な検索だけではユーザー自らの知識・関心を超える情報を入手することは難しく、「それまで知り得なかった価値ある情報を容易に入手することを可能とすること」こそが、情報接触におけるイノベーションにつながるものだというのが電通の考えだ。
本システム『gururin』では、現在、注目されている話題や、人気のあるウェブサイトが自動収集されるため、ユーザーはキーワードを入力することなく、操作パネルのボタンを押すだけで、興味や関心を喚起する、様々なウェブサイト上の情報に偶然に出合うことが可能となる。
その仕組みは、まず注目されている話題や人気のあるサイトの自動収集とユーザーによるサイトのレコメンド情報を基に、閲覧対象となるサイトのリストを構築する。続いて収集したサイトそれぞれにスコアを付与し、関連性に基づき複数のページをまとめたトピックスを作成し、ザッピング的に閲覧するためのシナリオを作成するというものだ。
思想としてはテレビに近いものであり、インターネットが普及した現在でも、「テレビで話題のあの情報」と言えば、十分な説得力を持つ。
現在、「ネットで話題の情報」と「テレビ・雑誌で話題の情報」は、全く別とまではいかないが、かなり違いがある。電通の提案は価値ある情報は、情報発信側が十分に収集選別したものであるというものであり、ネットの情報ソースが依然としてマスメディアが取材・報道したものであることを考えると、一概にこれを否定はできないだろう。
しかし、コアなネットユーザーからの反発は必定であり、このシステムが実用段階に入ったときに、情報発信のあり方がふたたび問われることになるだろう。
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)