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【映画行こうよ!】”この男”を知らなかったことを悔やむ。映画『MILK』

2009年5月7日 16:03

(C) 2008 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

自らがゲイである事を公表し、自分たちゲイや弱者の為の権利を守った政治家の半生を追った映画『MILK』。誰からも愛される暖かい人柄と知的な政治的才能を併せ持つミルクは、ゲイやマイノリティーへの偏見がまだ色濃かった当時の世間をあっと言わせ、自分たちの存在をしらしめた。また彼は数々の男性と恋に落ちては悲しい別れを繰り返す。




1970年初頭、40歳の誕生日を迎えたミルクは40年生きてきた意義が何も無いことを嘆いていた。「ミルク」と言うからには牛乳屋さんなのかと思ったら、『MILK』の主人公ハーヴィー・ミルクという男性は、1970年代はじめは普通のサラリーマンだった。
のっけから、ミルクが一緒に人生を変える男性、スコット・スミス(ジェームズ・フランコ)を、地下道でナンパするシーンから始まる。20歳年下のスミスをゲットして喜ぶミルク。男同士のセックス後、ケーキのクリームをつけじゃれあう姿に、頭では理解しなきゃと思いつつも、記者にはけっこう刺激が強くてドン引き。彼の他にも、映画後半になって小悪魔のような少年がミルクの愛人として登場するが、「男同士の恋愛も、やっぱり相手は若い方がいいんだ・・・・・。」という、おかしなトリビアに気づいてしまう。

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当時、自由の国アメリカでも保守的なキリスト教の考えが強く、ミルクら同性愛者の権利など認められていなかった。日本の最近の映画『ホノカアボーイ』でも、この当時にゲイであることをカミングアウトしていた老人が出てくるが、ミルクも生きていたらあの年代。軍隊の経験もあり、除隊後も銀行など堅い職に就くミルクはずっとクローゼットに隠れるように、ゲイである事を隠して生きてきた。おおやけに付き合う事ができない現実に苦しみ、過去に恋人が何人も自殺している。

そんな事情をはらんで、自分たちゲイの権利を認めてもらおうと、サンフランシスコのカストロ通りにスミスと牛乳屋ならぬカメラ屋さんを開く。もともとゲイが集まりやすい場所であるが為に、この「カストロ・カメラ」は彼らのたまり場となり、さまざまな知恵をもったゲイたちがミルクの元に集まっていく。やがて、ゲイのコミュニティーと化したこの場所から、ゲイに冷たい他店への“不買運動”が始まり、大企業を巻き込む騒ぎに発展。しだいにミルクの知名度は上がり、彼はゲイの権利を得る為に政治の道へ進む。社会的圧力に屈しない彼らの快進撃が始まる。

(C) 2008 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

ミルクがその手腕を見込んで引き入れたレズビアンのやり手姉ちゃん・アン(アリソン・ピル)の投入で、ますます勢いづくミルク。ついには、カリフォルニア州サンフランシスコ市の市会議員に当選し、アメリカで初めて同性愛を認めた上で選ばれた公職者となった。

自分たちの「楽園づくり」に甘んじず、少数で立場の弱い人々と共に戦おうというミルクらゲイの姿勢はすがすがしい。同時に政治的駆け引きにもスキが無い。TVやマスコミを引き付け、デモの群集をも上手く利用するミルク。彼の成功とは裏腹に、スミスをはじめ彼を愛する男たちの心はかき乱され狂っていく。ミルクはそれほどの人物であった。

ミルクを演じるショーン・ペン。重厚で温和な彼の性格を現す演技は文句のつけようが無いが、同じ80年代アイドルなら、ミルクを演じるのはショーンよりチャーミングなマイケルJフォックスの方がしっくり来たかもしれない。

(C) 2008 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

その他、スミスを演じるジェームズ・フランコ以外はなぜか、アンを始め仲間のゲイたちも「実物の写真」の方がオシャレで美形。いかに「カストロ・カメラ」が時代の最先端であったかがよくわかる。

70年代当時の衣装や風俗、熱気の高まる雰囲気や街の様子など、ガス・ヴァン・サント監督のつむぎだす『MILK』の世界は時代に忠実。新聞記事や実際の映像の織り込み方も違和感が無く、個性的なキャストの配分により、ストーリーもまとまった。魅力的なミルクの人物像でグイグイと引っ張り、ラストまで一気に見せてくれる。

それにしても、アラフォーの記者は今回の映画が公開されるまで、ハーヴィー・ミルクとう人を知らなかったと同時に、こんなユニークなヒーローが自分の生まれた頃のアメリカで活躍していたのを知らなかった事を悔やむ。いかにミルクの功績が評価されるべきものであるかわからないのに、それに触れた書物や映像がほとんど一般のメディアでは目しないということは、日本もまだまだ同性愛やマイノリティーの人たちに冷たい社会であるかがよくわかるのであった。

映画『MILK』のサポーターを務めるブログ、「ゲイリーマンのカミングアウト的思考」。こちらで、同性愛者や性同一性障害の仲間が“自分らしく生きられる社会”を目指すNPOの活動も紹介もしている。
(編集部:クリスタルたまき)

『MILK』は、絶賛公開中。

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