唇の動きを読み取ることでコミュニケーションを図る聴覚障がい者にとって、口全体を覆ってしまうマスクは非常に厄介な存在に違いない。聴覚障がいを持ちながらスーパーでレジ係として働く男性もここ数週間、客とのコミュニケーションがうまく取れず頭を抱えていたのだが…。『ABC News』などがアメリカのスーパーで起きた優しく心温まるストーリーを伝えている。
米ワシントン州クラーク郡バンクーバーに住むマシュー・シモンズさん(Matthew Simmons)は、地元スーパー「トレーダー・ジョーズ」で週末だけパートのレジ係として働いている。マシューさんは聴覚に障がいがあり、普段は相手の唇の動きを読み取って会話をしているが、新型コロナウイルスの感染防止のため人々がマスクを着用するようになってからはコミュニケーションが取れず、かなりのストレスを感じていた。
聴覚障がいがあることを知らないスーパーの客は会計の際、マシューさんに商品の質問をしたり、世間話をしようと話しかけてくる。しかしマシューさんにその声は届かず、客は「無視された」と気分を害するばかりか、店の評判の低下にも繋がってしまう。サービスの低下を懸念した店側はマシューさんの勤務中はスタッフとペアを組ませることで対処することにしたが、マシューさんはどうにも肩身が狭かった。
そんなある日、マシューさんはネットで聴覚障がい者用にデザインされたTシャツを見つけた。表には「わたしは耳が聴こえません」、裏には「私の肩を叩いて下さい」と書かれており、