2006年に米ジョージア州で起こったその衝突事故は、消防署の救急救命士が妊婦とお腹の子供の命を奪うという悲劇的なものであった。このたび12年の時を経て、加害者と被害者遺族の男性の間に育まれた特別な絆を米メディア『TODAY』が報じている。
2006年10月2日、ジョージア州ダキュラで当時20歳だった消防署の救急医療隊員マット・スワッツェル(32歳)は、24時間勤務のシフトを終えて帰宅途中に衝突事故を起こした。時間にしてわずか3~4秒ほどだったが、居眠りをしセンターラインを越えて他の車に衝突。その車に乗っていたのは、妊娠7か月のジューン・フィッツジェラルドさん(30歳)と長女フェイスちゃん(1歳7か月)だった。この事故で、ジューンさんとお腹の子供の命が奪われた。
ジューンさんの夫で牧師のエリックさんは、最愛の妻と生まれてくるはずだった第2子を失い悲しみに暮れた。マットの裁判が行われるようになった時、検察側はエリックさんに「被告に対して最大の刑期が与えられることを望むか」と尋ねた。しかし、エリックさんはこのように思った。
「それを望んだところで失われた2つの命はもう取り戻せない。牧師の自分は常に人々に『赦すことの大切さ』を説いている。復讐をするか赦すかといわれたら、私にできるのは『赦す』ことだ。これは私に与えられた試練です。」
結果として、エリックさんのおかげでマットは情状酌量が認められ、判決は罰金刑と地域奉仕活動のみに留まった。裁判中にエリックさんはマットと言葉を交わすことは一度もなかったが、事故からちょうど2年経ったある日、2人は偶然にも再会した。
エリックさんのために追悼カードを買おうと店を訪れたマットの姿を、スーパーから出てきたエリックさんが見つけ、