スペインの首都マドリード最大の鉄道駅・アトーチャ駅は、物騒で雰囲気が悪いことが多いヨーロッパ主要都市の鉄道駅の中で異色の存在だ。駅構内は世界五大陸から集められた植物を鑑賞できる植物園となっており、数多いマドリードの観光スポットの中でも隠れた名所として知られている。また構内に張り巡らされた池には沢山のカメが住み着いており、天井のガラスから差す太陽光の下でのんびり日光浴をするその様子は、約300種類もの植物とともに駅利用者の心を和ませている。だが近年、これらのカメの増殖が様々な問題を引き起こしていることから、スペインの鉄道インフラ整備管理公社(以下ADIF)は多額の費用をかけてカメを“新居”に移すという決定を下した。
『The Local es』によると、アトーチャ駅に住み着いているカメの数は約300匹、その約80パーセントは大きく成長しすぎた、あるいは飼い主に放棄されたものと見られるミシシッピアカミミガメである。日本の池や河川にも不法投棄され増殖が問題となっているミシシッピアカミミガメはアメリカ原産であり、スペインでも「外来種」に該当するため売買は違法とされている。
スペイン紙『EL PAÍS』では、ADIFがカメの移動や維持のために5万ユーロ(約680万円)を投じると伝えている。アトーチャ駅の従業員は定期的にカメの死体を取り除く作業をしなければならず、更には駅利用者が投げ入れた餌の腐敗により水が汚染されるなど、カメが引き起こす様々な問題は以前から駅にとって悩みの種であった。そのためADIFは2009年にカメの不法投棄を禁ずる警告を出していたが、最近になって動物保護活動家からカメの居住環境の悪さが指摘されるようになったため、今回の計画が踏み切られたもようだ。
なお駅構内の池の跡地は環境教育や社会及び文化活動の促進など非商業的な目的のために使用される予定であり、