障がい者や妊婦、高齢者らのための優先席だが、このほどイギリスで健常者がその席に座り、誰一人として席を譲ることがなかった。しかも電車の車掌までもが「通路に座れ」と盲導犬を伴った視覚障がいの男性に指示したことで、「なんのための優先席なんだ」と男性は怒りを露わにしている。英メディア『Mirror』『The Sun』などが伝えた。
英リバプールに在住のロジャー・デブマンさん(56歳)は、姉の誕生日を祝うため妻のデボラさんと一緒にリバプールからピーターバラへ向かう途中、不快極まりない思いをした。ヨークで英鉄道会社「ヴァージン・トレインズ」に乗り換えてピーターバラまでの2時間半、ロジャーさんは通路に盲導犬と座り続けるしかなかったのだ。
「2回の心臓発作と脳卒中を起こし、心臓にペースメーカーを入れている」というロジャーさんは、視覚障がい者でどこへ行くにも盲導犬“ネビン”を伴うことが欠かせない。車内では盲導犬が横たわれるスペースのある優先席を確保する必要があり、この日の旅のために事前に座席予約を試みたようだ。
ところがサイトでは優先席のリクエストができず、ロジャーさんは座席の予約をしないまま旅を強いられることになってしまった。当日、車内に乗り込んだロジャーさんとデボラさんは車掌に事情を説明したものの、「満席だからそこに座って」と車掌は通路を指さしたという。
ロイヤル・リバプール大学病院で看護師をし、夫のケアをしているデボラさんは「車掌は私のために座席を得ようとしてくれたのですが、私は彼の世話をしているので夫を置いて自分だけ座りに行くことなどできるはずもないでしょう」と話す。
優先席は健常者らが占領し、誰一人としてロジャーさんのために席を譲る人はいなかった。ロジャーさんとデボラさんは、帰りには別の鉄道会社「ロンドン・ミッドランド」を利用したが、そこでも健常者らが優先席に座っており、ロジャーさんは普通の座席に座ったものの、ネビンのためのスペースはなく座席間の通路に座らせる羽目になったという。
「仕方なくネビンを通路に座らせたのですが、当然他の乗客の行き来の邪魔になります。乗客らはうんざりした目つきで見たり、舌打ちしながら犬をまたいでいました。障がいを抱える人が乗り込んで来たら、優先席を譲るのが筋ってものでしょう。私は席が必要な人には譲るように言われて育って来ました。ですが最近は、ほんの少しの人が席を譲ってくれるだけです。今回も私に席を譲ってくれた人はおらず、他の乗客らは私を無視していました。いったいなんのための優先席なのでしょう。」
怒りを露わにそう語るロジャーさんは、今回の件をFacebookに投稿し「これが、あのリチャード・ブランソン氏が所有する電車ですよ。車掌は優先席を空けさせるようにするべきではなかったのでしょうか。この状況が間違っていると思う方は、是非投稿をシェアしてください。そうすればブランソン氏の目に留まるかも知れません」と綴った。