どんなに巧妙な嘘をついてもいつかは必ずバレるものだ。このほどイギリス史上前代未聞とされる大胆な嘘で、有名旅行代理店から多額の損害賠償を搾取しようとした夫婦が懲役刑を科せられた。裁判では判事に厳しく糾弾され、号泣する姿を見せていたという。『Liverpool Echo』『Metro』『The Sun』などが伝えた。
マージーサイドのウィラルに住む4児の母デボラ・ブリトン(53歳)とポール・ロバーツ(43歳)は、子供たちを連れて2015年6月と2016年の6~7月に地中海に浮かぶマヨルカ島へ旅行した。
食事などすべてが含まれている「オールインクルーシブ」パッケージで旅行した一家は、ホテル「Globals America」にて降り注ぐ太陽のもと休暇を満喫した。その様子は「最高のホリデー」という言葉とともにデボラのFacebookにも投稿された。ところが昨年8月、2人はイギリスの旅行代理店グループ「Thomas Cook Group plc(トーマス・クック・グループ)」にクレームを申し立てた。
その内容は2回の旅行でデボラとポールのほか、13歳と14歳の2人の子供たちが熱を出し下痢や胃けいれんなどを患い、吐き気に襲われたことによりホリデーが台無しになってしまったというもので、書類を作成する弁護士にも虚偽の報告をして旅行代理店に20,000ポンド(約297万円)の損害賠償を請求したのだ。
今年3月に、トーマス・クック側から「クレームに対する損害賠償金は支払わない」と伝えられたものの、2人は6月まで申し立てを続けた。この間、ホテル側は「衛生管理には何の問題もなかった」と主張している。また夫婦と親しくしていた従業員女性の1人が、Facebookを通じてデボラに「ひょっとして詐欺を働こうとしているのか」と尋ねていた。これにデボラは「ポールが借金を抱えていて、法の抜け穴を何とか利用できないかと思ったが、馬鹿なことをした。申し訳ない」と謝罪していたものの、トーマス・クック側へのクレームを取り下げることをせず、結局逮捕されることとなった。
今年7月13日、初公判となったリバプール治安判事裁判所には、2人の詐欺に加担したとされ2件の詐欺容疑で逮捕・起訴されたデボラの娘シャーリーン(30歳)も出廷したが、3人は「何も悪いことはしていない」と述べ、計6件の詐欺容疑について完全否定した。しかし「旅先での病を偽り損害賠償を請求するというのは、イギリスの犯罪裁判では前代未聞のケース」とこの件を重く受け止めた判事の決断により、リバプール刑事法院での公判が行われることになった。