飛行機が離陸する直前に行われるセイフティ・インストラクション。客室乗務員は乗客の誰もが真剣に見て聞いてくれることを願っているはずだが、旅慣れている人々はまるで知らん顔をする。だがこのほど「皆さん、これを見なくちゃ損しますよ」といわんばかりの美しい機内安全ビデオをシンガポール航空が発表し、話題をさらっている。
ナレーターの声はそこそこに美しいが内容そのものはまったく面白みがない。機内安全ビデオの“つまらなさ”は世界各国のエアラインに共通して言えることではないだろうか。だがセイフティ・インストラクションとは実に重要なもので、「そこを何とか注目してもらえませんか」と客室乗務員(以下CA)たちの表情は真剣だ。そんななかで知恵を絞ったのがシンガポール航空。今月7日にYouTubeで公開された動画が「あまりにも美しい」と評判を呼んでいるようだ。
シンガポール航空は安全ビデオの進行役を務めるCAに、誰もが注目してしまう大変美しい女性を選んでいる。同国の観光地で目にする素晴らしい光景、劇場、クラシカルな造りの美しい家屋などを舞台に、美しい音楽とともに「シートベルトをしっかりとお締めになり」 「お荷物は頭上の棚にお収めいただき」 「離陸の際はテーブルと背もたれは元の位置に」 「すべての電子機器は電源を切り」 「酸素マスクが下りてきた場合は」 「救命胴衣を着用する際は」といったおなじみの指示が次々となされる。いずれの動作もそれは優雅で美しい演技として撮影されており、約5分間のビデオはまさに目の保養といえそうだ。
同エアライン営業マーケティング部門のキャンベル・ウィルソンさんは「従来の取り組みと比較すると、このアプローチ方法はお客様の注目を集めることにおいてかなり効果的といえそうです」と述べており、彼らにとっても自信作であるもよう。「同時にシンガポールの有名な観光スポットを世界の人々に楽しんでいただきたいと思います」とのことだ。