子供から大人まで様々な状況で精神的に不安定な感情を抱える人たちを癒し、ポジティブに生きるための手助けをするセラピー犬。このほどオーストラリアのニューサウスウェールズ州で、ネピアン病院を訪問した非営利団体「Nepean Therapy Dogs(ネピアン・セラピードッグ)」のセラピー犬が、ある女性と運命的な出会いをしたことを海外動物専門サイト『The Dodo』が伝えた。
「Nepean Therapy Dogs」の運営者ニコール・セレバンさんはある日、セラピー犬のレイディー・ダーシーを伴ってネピアン病院にいる1人の患者を訪問した。その患者は不幸にもその日の夜に他界してしまったが、ニコールさんは同じ病棟の別の患者にもレイディー・ダーシーを引き合わせた。それがトレイシー・プライスさんだった。
トレイシーさんは難しい脳手術を終えICU(集中治療室)から出たばかりで、術後も不安や恐怖を抱えており情緒不安定になっていたようだ。また病院から7時間も離れたところに住む家族や友人らに会えない寂しさもあり、突然のセラピー犬の訪問に驚きながらも歓迎した。
ニコールさんは病室で、トレイシーさんの許可を得てセラピー犬をベッドに上げた。するとレイディー・ダーシーはトレイシーさんに寄り添い、じっと見つめた。トレイシーさんはその時の気持ちをこのように話している。
「ネガティブだった気持ちが一気にポジティブなものへと変わりました。レイディー・ダーシーの訪問は、手術後の気持ちのスイッチを切り替えるのに私がまさに必要としていたことでした。私をじっと見つめてくれた時、ただ患者のそばに横たわるというだけでなく気持ちが繋がったように感じて、とても嬉しく感じました。」
ニコールさんは、4年前にレイディー・ダーシーをセラピー犬として訓練した。「レイディー・ダーシーは、とても優れた能力を持っています。患者が必要としていることを直感的に察することができるのです。大抵、ベッドで自分の鼻と患者の鼻を舐めることなくすり合わせるんですが、それがこの犬の挨拶の仕方なんです。その後も患者のそばに寄り添い、居眠りをしたりします。私たちは患者を選びません。ですが時には犬好きでない人もいますので、病室に入る前に『犬を抱っこしてみたいですか?』と問い合わせてイエスと返ってきたら入室します。ほとんどの患者の場合、このレイディー・ダーシーと絆が生まれるのですが、特にトレイシーさんとの間には特別な絆が築かれたようです。」