稀な遺伝子疾患を抱えた人のニュースを度々こちらでお伝えしているが、このほど医学上これまで報告例がなく、70億分の1の確率とされる非常に珍しい染色体異常で生まれた英チェシャー州マックルズフィールドに住む男児のニュースを、英メディア『Manchester Evening News』『The Sun』などが報じている。
約2,920gで生まれたアンガス・パルメス君は、出生直後から様々な疾患を抱えていた。心臓に複数の小さな穴が開いており椎骨が部分的にしか形成されず、内反足で慢性的な胃食道逆流症も患っていた。幼くして心臓手術や足の矯正が行われ、今から数か月前には消化器系の手術も無事に成功したようだが、何より特徴的なのは3歳の時に成長が止まってしまったその身体だ。アンガス君は現在13歳でありながら、身長が約93cm、体重およそ13.6kgという3歳児の姿をしている。
母のタンディーさん(48歳)によると、新生児の時の定期検診で医師が偶然アンガス君の染色体異常を発見したという。アンガス君の疾患は染色体の一部が欠損、もしくは全てが他の染色体に結合した状態の「染色体転座」と言われるもので、医師によると「似たようなケースは存在してもアンガス君と全く同じ病気は過去に報告例がなく、70億分の1の可能性で発症する非常に稀な遺伝子疾患」なのだそうだ。
言葉をうまく話せないアンガス君は、自分で作り出した独特の手話やサインでコミュニケーションをとっている。彼のことを知っている人はその意味を理解しているが、アンガス君は時に自分をパンチしたり物に身体を擦りつけたりして痣をつくることもあるようだ。タンディーさんは「アンガスは身体が痛む時にそのような自傷行為をすることがあるのです。見ているのは親として辛いですが、それが息子のコミュニケーション法のようです」と言う。
また、食生活においても大豆アレルギーを持っているため常に注意が必要であり、ほとんどの食べ物はペースト状のスープにしなければならない。場合によってはチューブによる栄養補給も必要になるという。さらにはよだれが垂れるのを防ぐために、筋肉の強化としてボトックス注入も3~4か月毎にしており「息子の体にはもう40回以上もメスが入っています」とタンディーさんは語る。補助なしでは歩けないアンガス君は、普段は車椅子を使用しているが、家の中では座った姿勢のまま前進するのが好きなようだ。「息子は自信がないだけで、練習すれば歩けるようになるのでは」と思っているタンディーさんはこの夏、アンガス君に初めての歩行訓練をさせる予定と明かしている。
現在のタンディーさんはアンガス君の世話をフルタイムでしている。障がいを抱えるアンガス君を連れていると、世間からジロジロみられることも少なくない。しかし本人は笑顔を絶やさず、大好きな水泳を楽しみ、地元にあるパーク・レーン・スクールにも通っている。
様々な学習障がいを抱えコミュニケーションが困難な子供たちを教えているこの特別学校では、個々のレベルに応じた授業カリキュラムが作成されており、アンガス君は2歳半から通学している。19歳まで通う予定だが、卒業後は仕事をすることは困難なため、将来のことは未定だとタンディーさんは話している。