どんな罪でも見逃さず逮捕するのが警察官の仕事だろう。しかしカナダのトロント警察で働くある男性警察官は「逮捕することだけが最善の解決法ではない」と18歳青年が万引きしたシャツの代金まで支払った。その後、青年はそのシャツで面接に行き、見事に仕事をゲットしたという。困難にぶつかる若者にチャンスを与え、正しき道へ導いた警察官のニュースを『TPSNews.ca』『CP24』『The Independent』など複数のメディアが伝えた。
8月6日の夜、トロントにあるスーパーマーケット「ウォルマート」から警察へ通報が寄せられた。同僚と現場へ駆けつけたナイラン・ジェイアンサン巡査は、スーパーの監視員から18歳の青年がワイシャツとネクタイ、靴下を万引きしたことを知らされた。
ジェイアンサン巡査は「普通はこのような商品を万引きしたりしない」と思い、青年から事情を聞こうとした。当初は躊躇った様子を見せていた青年だが、やがて「父親が病気になり稼ぐことができなくなり、家族を養うために自分が仕事を見つけなければならないと思った」と語った。
ただ仕事を探さねばという思いしか頭になかった青年は所持金を全く持っておらず、万引きという過ちを犯してしまったようだ。青年の話を聞いたジェイアンサン巡査は、経験と直感からこの話は真実だと信じた。そして逮捕する代わりに店のマネージャーと話をして、青年が盗んだ商品を自費で購入して差し出したのだ。
そして11日、青年はジェイアンサン巡査にプレゼントされたシャツやネクタイを身に着けて面接に出向き、見事に仕事をゲットしたそうだ。この知らせを聞いたジェイアンサン巡査は、このように語っている。
「多くの犯罪の場合、逮捕して起訴することが最善の問題解決となりますが、時にはそうでない場合もあります。この青年を見た時、人生の困難に直面していることがわかりました。ただ仕事を得ようとしたことで過ちを犯してしまったのです。犯罪者の中には、もっともらしい作り話をして我々から情状酌量を願う者もいますが、この青年は万引きをしたことを深く反省していました。誰でもミスはします。私はこの青年には2度目のチャンスを与えてやらねばと思ったのです。」