ハリケーン「ハービー」は熱帯低気圧に変わったものの、米南部テキサス州を中心に大規模な洪水が発生している。今後も大雨が予想されており、前例がない規模で被害が拡大しているようだ。そんな中で避難する住民をさらに怯えさせているのが、日本でも話題になっている“ヒアリ(fire ant)”だ。『WGN-TV』など複数のメディアが伝えている。
洪水が多発する南米原産のヒアリは、1930年~40年代に米国本土に侵入したと言われている。暴風雨で巣が押し流されると、生き延びるために群れになって水面を移動するという習性があり、テキサス州の冠水した道路でもヒアリが水に浮いて漂うのが目撃されているようだ。
農産業の研究や防災教育に携わる「Texas A&M AgriLife Extension Service」のポール・R・ネスターさんは、ヒアリについて次のように語った。
「洪水が発生するとヒアリは土の中から這い出してきて、仲間同士で大きな塊を作ります。1匹では溺れて死んでしまいますが、こうすることで水に浮くことができるのです。水上の茶色い塊は一見、玄関マット、大きなリボン、吹き流しや筏のようにも見えますが、ヒアリが絡まり合いボール状にくっついたものなのです。」
「ジョージア工科大学(Georgia Institute of Technology)」の実験では、ヒアリが洪水などのストレスに晒されると吸着盤を使って個体同士がしがみつくことが明らかになっている。こうすることでヒアリが本来持っている“水をはじく性質”が強化され、群れは弾力のある布のようになって水に浮くことができるのだという。また出来上がった布の隙間には空気泡が形成されるため個体が窒息することはないそうだ。