愛する夫と2歳の娘、そしてこれから生まれてくる双子の子供たちとの幸せな家庭を夢見ていたであろう21歳の妊婦が、脳卒中で倒れ脳死状態となった。しかし母親の胎内で双子の命は尽きることなく生き続け、今年2月に懸命な医師らの治療とケアにより無事に誕生した。妊婦の脳死から123日後のことであり、医学上前例のない奇跡の誕生となった。英メディア『Mirror』や『Metro』の他、米メディア『Inside Edition』が伝えている。
ブラジルのコンテンダに暮らすフランキーレン=ダ=シルヴァ・ザンポリ=パジーリャさん(Frankielen da Silva Zampoli Padilha、21歳)は昨年10月、仕事へ向かう途中だった夫ムリエルさん(24歳)に電話し「頭痛で死にそうだからすぐに帰って来て」と伝えた。
ムリエルさんは薬を飲むように指示したが、フランキーレンさんは「痛みが激しいの。首の後ろも痛くて倒れそう」と訴えたためすぐに自宅へ引き返した。すると体を震わせながら痛みで嘔吐と眩暈を起こし泣いていた妻を見つけ、車でカンポ・ラルゴにあるノッソ・サンホラ・ド・ロシオ病院へ連れて行った。
フランキーレンさんはこの時、ムリエルさんに「家にはきっと帰れないと思うから覚悟しておいてほしい」と話しており、実際にこれが夫が聞いた妻の最後の言葉となった。その後、意識を失ったフランキーレンさんは複数の検査を受けた結果、脳卒中になり激しい脳内出血を起こしていたことが分かった。治療にあたった医師らはフランキーレンさんが妊娠9週目であることを知ったが、「CT検査や抗生剤など強力な薬の投与をしたため、胎児の命はもって3日でしょう。胎児の心拍が停止したら、奥さんの生命維持装置も止めます」とムリエルさんに告げた。
ところがここで、医師も予期せぬ奇跡が起こった。生き延びることはできないだろうと思われていた双子は、脳死した母の胎内で成長し続けたのだ。神経内科学集中治療室の主任であるダルトン・リヴァベム医師はこのように語っている。
「超音波検査で胎児が生き続けていることを知り、驚きました。患者の臓器は全てそのままで生きているかのように動いていたので、我々は小さな命を救う決心をしたのです。」