北京の人々が恐れているものといえば、危険な物質を含んだ食品、PM2.5や黄砂をはじめとする大気汚染。そして忘れてならないのが一瞬にして命を奪われることがある地盤沈下である。それが発生する危険性が大変なスピードで増していると英メディア『theguardian.com』が伝えている。
北京市でたびたび発生している地盤沈下や道路の陥没の原因は、すざんな地下鉄開通工事のほか、2千万人の人口に水を供給するため過度の地下水汲み上げが続いていることにある。もしも地盤沈下が直下で起きれば建物の倒壊や鉄道の事故は避けられず、甚大な被害が出ることは間違いない。特に高速鉄道が走る北京東部は地盤沈下の多発地域として専門家が懸念の声を上げているのだ。
そんな中、人工衛星から送られてきた地球表面付近の新たな画像について、ニューカッスル大学(英)のLi Zhenhong教授、首都師範大学(北京)のChen Mi教授、アリカンテ大学(スペイン)のロバート・トーマス教授ほか7名の専門家がチームで解析を行った結果を専門誌『Remote Sensing』に発表した。もっとも深刻なのは、北京の新ビジネス街として急発展を遂げた「北京商務中心区(Central Business District))がある市中心の東側を大きく占める朝陽区。ここでは1年に11cmものペースで沈下が進んでいることになるという。彼らは『theguardian.com』の取材に、「建物や高速鉄道に及ぼす影響、危険性についてさらなる分析を進めている。早ければ今年後半にもその結果を発表したい」と語っている。
なお、地下水の使用量削減を早急に目指すべき朝陽地区は2015年1月、段階的に367個所の地下水汲み上げ施設を廃止するとの計画を打ち出した。また北京市も「South-North Water Transfer Project(南北分水プロジェクト)」を発足させ、6.7兆円の予算を組み、全長2,400kmの運河やそれに伴うトンネルの建設を進めたいと発表している。ここ数十年の間に土壌が乾いたスポンジのようになってきたといわれる北京。一刻も早い改善と設備の完成を祈りたい。
出典:https://www.theguardian.com
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)