同性婚が認められているレインボーカントリーとして知られる南アフリカ。しかし実情はそれほど簡単ではなく、自由と伝統の板挟みになっている人々も多い。ズールー族出身のゲイカップルも数々の難題を乗り越えて待望の女児を家族に迎えた。
地元メディア『News 24』の取材に応えたサベロさんは、ピンクの服に包まれた現在4か月のNdaloちゃんを愛おしそうに抱き続けていた。サベロさんとシブッシーソさんはゲイカップルである。2人はクワズール・ナタール州出身、ヨハネスブルグの専門学校で出会い、付き合って8か月目にシブッシーソさんがサベロさんにプロポーズした。そこに立ちはだかったのが2人の家族、非常に伝統を重んじるズールー族であった。もちろん同性婚など問題外である。
なんとか説得を続けた後、家族らはある条件をもとに2人の結婚を承諾した。それは「生物学上血のつながった孫を作ること」。ゲイカップルでは不可能な難題を突き付けてきたのだ。
結婚したものの次の難題を克服しなければならず、2人は話し合うたびに喧嘩になったり、自分を責めたりという日々を送っていた。養子では生物学上のつながりはない、女友達との性交渉により妊娠してもらうという案は人身売買にあたる恐れがあると弁護士に却下された。
途方に暮れていた2人に、友人が提案したのが「代理出産」であった。代理出産は、まずドナーとなる卵子を見つけることから始まる。病院にどういった子供を望んでいるかを伝え、それに見合った卵子を選ぶ。2人の精子を使い受精した受精卵を代理母に植え付けるといった仕組みである。
しかし彼らにとってこれは途方もない苦労の始まりとなった。代理出産について知ろうとする2人に、医師は拒否反応を示した。また代理出産をするとズールー族の親戚に報告したところ、「彼らの伝統に当てはまらない」とこちらも強い拒否反応を見せた。さらに、南アフリカ中を旅して代理母を探しても誰も条件に合わない。
万策尽き果てた2人の関係は徐々に悪化。するとそれを見かねた女友達が、自分が代理母になると申し出た。検査の結果、その女友達が代理母に最適であることが判明、カップルはようやく待望の自分の子供を迎える第一歩を踏み出した。
そして待ちに待った昨年12月4日、2人の血を分けた女児が誕生した。女児の名前はNdaloちゃん、ズールー語で“創造、産物”という意味である。2人が出産にこぎつくまでの費用は40万ランド(約300万円)であった。
初めて親族のもとにNdaloちゃんを連れて行くと、近所の住民までがやってきて珍しそうにNdaloちゃんを眺めたという。「手はあるのか?」「目はついているのか?」と親族は口々に質問を投げかけてきた。
娘を抱いて退院をした日、サベロさんは「人生をかけて娘を愛する」ことを誓ったという。これから多くの困難や差別を受ける可能性もあり、どうやって男性2人で子供を育てていくのか興味深い目で見られるであろう。サベロさんはそういった人々に、娘を育てられるんだという姿勢をみせると強い意志を持っている。
※ 画像はイメージです。
(TechinsightJapan編集部 FLYNN)