骨や関節の手術というのは、元のスムーズな動きを取り戻すまでに長い月日を要するものである。米ニューヨーク州にてひとり暮らしをしていた69歳の男性は、ヒザの手術とリハビリ、数か月にわたる温かい土地での療養を経てこのほどやっと自宅に戻ってきたが、そこに家はなかった。
なんとも虚しい悲劇が伝えられているのはNYロングアイランドのヘムステッド(=ヘンプステッド)に暮らしていたフィリップ・ウィリアムズさん(69)。8か月ぶりに戻ったわが家は雑草が思い切り背丈を伸ばした無残な空き地と化していた。電化製品、家具、熟睡できるベッドと枕、思い出の詰まったアルバム、大事な書類、衣類…失ったものは建物ばかりではないはずだ。
フィリップさんが闘病に入ったのは昨年12月のこと。ヒザの手術とそれに伴うリハビリ指導を受け、退院後は温暖なフロリダ州で過ごし、歩行に自信が持てるようになったことから8か月ぶりにロングアイランドに戻ってきた。しかし「町の条例に反した危険な家屋。持ち主は行方不明」という扱いのもと、ヘムステッド町はその権利を行使して彼の家を取り壊し、撤去していたのである。
怒り心頭に発して町役場に怒鳴り込んだフィリップさんに対し、町の職員は「あなたと連絡を取ろうと私たちは不動産登記、銀行、債権者ほかあらゆる先に問い合わせ、必死にあなたを捜しました」と答えた。ついにフィリップさんは損害賠償を求めて町を相手に裁判を起こし、彼の消息について町はどれほど真剣に捜す努力をしたのかが争点になると弁護士は話している。もっともフィリップさんは郵便物の転送依頼の手続きを行っておらず、ポストの中身は溜まるばかりであったことも行方不明という印象を強めてしまった可能性があるようだ。
※ 画像はlongisland.news12.comのスクリーンショット。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)