『マンデラ自由への長い道』で主演のネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領を演じたイギリス人俳優、イドリス・エルバが南アフリカへ娘と旅行をするはずだったのだが、今年から入国管理法が変わっていたことを知らなかったためフライトを拒否されてしまった。
イギリス国籍者が南アフリカに短期滞在する場合は通常ビザを申請することなく入国できるが、ここに落とし穴があった。人身売買防止目的として今年の初めに改変された入国管理法では、18歳未満の子供には全員出生証明が必要であり、更に片親だけの場合はもう片親からの同意書をチェックイン時に提示することが義務付けられた。これはビザとは関係なくすべての18歳未満の子供が対象となる。
イドリス・エルバの娘は現在14歳。今回は娘との二人旅だったため、娘の出生証明と母親からの同意書が必要であった。11月22日、イギリスのヒースロー空港のビジネスクラスラウンジにいたエルバは、必要書類がないという理由からフライトを拒否されてしまった。
マンデラを演じたエルバにとって、南アフリカには特別な思い入れがある。撮影でマンデラの生きざまを知ったエルバは、その後『Mandela, My Dad and Me』という映画を制作、さらに『mi Mandela』というCDを出すなど、マンデラに影響を受けた活躍をしている。南アへの入国を拒否されたエルバはかなりショックを受けていたようだが、いかに南アを愛しているとはいえ娘を置いて旅立つこともできず、結局旅行はキャンセルとなった。
11月25日、内務省マルシ・ギガバ大臣はこの件に関して「ズマ大統領はビザの規定に則るよう発言している。いかにスーパースターであっても国の法には従うべきである。」とこの入管法の重要性を強く主張した。
しかし、実際にはこの法改正のため、大混乱が生じている。南ア国内では、出入国のために必要な出生証明を発行するまでに、ただでさえ仕事の遅いことで有名な内務省に出生証明書の申請が殺到し、発行までに最短でも2ヶ月かかってしまうこととなった。さらに海外からは、数日間の滞在のためにわざわざ面倒な書類を揃えるくらいなら他の国へ行くという人が増えたため、南アの訪問者が激減してしまった。統計局によると、8月の南ア訪問者は昨年より6.4%減、今年7月と比べても2.9%減となっている。エルバのような被害者が今後増えていくことは、南アフリカにとってさらに深刻な問題となるであろう。これら現状や批判を受けて、現在南アフリカ政府では譲歩案を検討中だという。
(TechinsightJapan編集部 FLYNN)