「歩行者と自転車のみ通行可能」これを守り続けて栄えている商店街もあれば、日本の地方都市では、“大通り”と呼ばれるも拡幅した際に中央に車道を設けたところむしろ衰退してしまったというケースもある。魅力的な街の在り方を模索する上で優先するべきは車か人か。排気ガスによる大気汚染も深刻な問題である今、アイルランドのダブリン市が中心部の大きな道路からマイカーを次々と排除する方針を示して注目を集めている。
ガソリン消費量、ガス排出量、道路渋滞を減らし、きれいな空気を手に入れ、公共交通機関の利用率アップで税収入につなげたいと必死のダブリン。一方で中心部にある名門大学の「トリニティカレッジ・ダブリン」の南側では、土産店ほか人気のショップやカフェ、レストランが多数集まる365日完全歩行者天国の“グラフトン通り(Grafton Street)”が大変な賑わいをみせている。このような状況からダブリン市議会の交通輸送対策委員会が白熱した議論を進めていたのは、同大学周辺の道路から一般車両をどんどん締め出すということ。このたび具体的な提案書がまとめられた。
アイルランドのメディア『sundayworld.com』が伝えたところによれば、それぞれの道路について歩行者や自転車はもちろんだが、バス、タクシー、トラム(路面電車“LUAS”)といった公共交通機関もいくつかが通行可能になるとのこと。ただしメンバーの中には異論を唱える委員もいる。ダブリン市商工会議所のトップでもあるリチャード・ガイニー議員は、「ダブリン中心部には10,000台分もの駐車場があり、その3割は観光客が利用している。大学周辺道路を使用できなくなることの弊害は大きい」などとして案の修正を訴えかけているという。
自動車の排気ガスが原因となるPM10の大気汚染をどうにか抑えようと、様々な取り組みを導入している欧米諸国。アメリカの幹線道路では1人だけで乗っているマイカー通勤者に課金する都市があるほか、カープール車(2人あるいは3人以上が乗車)には最も速く走れるエクスプレスレーンの使用が許される。また仏パリでは、1年半ほど前から幹線道路の最高速度が軒並み60km/h以下へと規制されている。コンパクトサイズの車を好みカーシェアリングも積極的に利用、ナンバープレートごとの規制にも従うなど人々のエコ意識は高い。さらにロンドンは、市内中心部に入る車に対して「渋滞税(コンジェスチョン・チャージ)」の支払いを義務付けたことで、道路の渋滞緩和と公共交通機関の利用促進を図っている。日本もこうした例を早急に学ぶべきであろう。
※ 画像はsundayworld.comのスクリーンショット。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)