受刑者とて人間である。わが身が犯した過去の過ちを悔い改めたあかつきには、人として善行をしてみたいという願望にかられることがあるのだろう。自分を刑務所にぶちこんだ憎き相手が白血病であることを知らされると、居ても立っても居られない気持ちであることを申し出たのであった。
「私の骨髄でフォックス判事を白血病から救えるかどうか、適合検査をお願いします。」
そう申し出たのは、米ノースカロライナ州のフランクリン刑務所でおつとめの最中にあるチャールズ・オルストンという男の受刑囚。判事というのは、自身が武装強盗を働いた事件についての裁判で25年を求刑した当時の地方検事で、現在は最高裁の判事となっているカール・フォックス氏のこと。今年7月、フォックス判事が白血病で骨髄ドナーを探しているものの白血球のHLA型が適合するドナーが見つからないという報道を知ったオルストンは、フォックス判事に以下のような手紙をしたためたのであった。
“あなたは裁判で私に対してとても重い求刑をしました。でもあなたに対する敵意や憎悪の気持ちはすでにありません。なぜなら私がこうして生きていられるのも、あの時刑務所に入れてもらったからであり、私はあなたにその恩返しをしたいのです。”
“あなたが白血病になり、白血球のHLA型が適合する骨髄ドナーを探していると知りました。ひょっとしたら私がマッチするのかもしれないという思いから、検査を受けてみるつもりです。もしもマッチした場合は快く骨髄の提供に臨みたいと思っています。”
集団生活を強いられる受刑者というのは、伝染病罹患のリスクが大きいという理由から残念ながらドナー登録は受けつけられていない。それでもフォックス判事は、オルストンの温かい気持ちがただ嬉しいとしてこの手紙には大きな感銘を受けたもようだ。受刑者にも人としての深い情があるとして、この話題は瞬く間に世界に広まっていった。
※ 画像はwral.comのスクリーンショット。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)