新国立競技場の建設計画案が白紙撤回となり現在、計画の再検討が行われている。世間は新国立競技場に関してどのように考えているのか。「コスト抑制」や「魅力あるスタジアム」のために必要なことについてネットで意識調査を実施した。
2020年東京オリンピック・パラリンピックのメーン会場となる予定の新国立競技場にかかる総工費が当初計画の2倍近い2520億円に膨らんだことで、国民やアスリートから批判が噴出。そうした状況のなか、安倍晋三首相は7月17日に建設計画案を白紙撤回して「ゼロベースで見直す」と表明した。
政府は本年秋口までに現実的な計画を策定するとして現在、再検討中だ。Yahoo!ニュースによる意識調査では、新国立競技場について「魅力あるスタジアムにするためには何が必要?」及び「コスト抑制のために何をすべき?」という内容でアンケートを行った。
■新国立競技場、魅力あるスタジアムにするためには何が必要?
・アスリート(競技者)にとって、使いやすい施設にする:44.7%(58,198票)
・景観、歴史、地域づくりなど、周辺地域との調和を図る:17.6%(22,941票)
・日本らしさ(先端技術、クールジャパン、おもてなし、和風など)に配慮する:14.5%(18,897票)
・安全安心やバリアフリーを充実させると共に、女性の利用や環境にも配慮する:10.1%(13,161票)
・優れたデザインにより、シンボル性・ランドマーク性を発揮する:5.3%(6,917票)
・その他:7.8%(10,098票)
(Yahoo!ニュース 意識調査調べ 対象は130,212人 実施期間:2015年8月4日~2015年8月17日)
■新国立競技場、コスト抑制のために何をすべき?
・メンテナンスが容易で、維持管理のしやすい施設となるよう留意する:42.5%(51,158票)
・必要な機能や施設・設備の水準について、全面的に厳しく選別する:22.2%(26,755票)
・スポーツ競技のための機能に重点化する:17.0%(20,426票)
・オリンピック・パラリンピックの開催スケジュールに間に合うよう、特殊な工事等を避ける:7.7%(9,308票)
・収容人員について、必要性を見極めて、適切に設定する:3.2%(3,879票)
・その他:7.4%(8,914票)
(Yahoo!ニュース 意識調査調べ 対象は120,440人 実施期間:2015年8月4日~2015年8月17日)
調査結果によると、魅力あるスタジアムにするためには「アスリート(競技者)にとって、使いやすい施設にする」(44.7%)、コスト抑制のためには「メンテナンスが容易で、維持管理のしやすい施設となるよう留意する」(42.5%)ことが最も期待されていると分かる。
白紙撤回後に新たな整備計画を検討している、関係閣僚会議の副議長を務める下村博文文部科学相は、インタビューで2020年以降には民間委託して「黒字を前提に、国民の税金が垂れ流しにならないスキームを考えるべき。プロの野球やサッカーでの活用もありうる」と語った。
総工費がどの程度になるかはこれからだろうが、後々黒字を目指すには初期費用に加えて維持費のコストダウンも必要となる。それを実現するには前述の意識調査で多かった意見と同じ方向性となりそうだ。
8月16日にMBSで放送された『情熱大陸』では、詩人の谷川俊太郎さんを特集した。そのなかで、7月10日に長野県松本市のザ・ハーモニーホールで行われたトークライブに出演した谷川さんが詩を読む場面があった。
彼は「国立競技場の建て替え問題で思い出した詩。1970年の大阪万博が行われた時に書いたもの」と説明して、『ごめんね(ナナロク社)』より『魂のために』を朗読した。
「鉄骨や伐採された木、鏡や硝子などが使われ、多くの人々が動き、迷子になってなく子どももいるだろう。金も手から手へ渡るだろう。それでも人々はさらに夢見るだろう。すべては“魂のために”。そして鉄はさびるだろう…」との主旨に思えた。
読む人によって受け止め方はさまざまだろうが、たとえば「アスリート(競技者)にとって、使いやすい施設にする」という視点は“魂のために”必要ではないだろうか。そうした意味で、今回の意識調査の結果と谷川さんが朗読で伝えようとしたことには、通ずるものがありそうだ。
※画像は『twitter.com/ShuntaroT』のスクリーンショット。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)