神戸連続児童殺傷事件の加害者・元少年Aによる手記『絶歌』をめぐって、被害者の遺族が取材に応じるなど今も余波が広がる。そんななか米ニューヨーク州の“サムの息子法”と呼ばれる法律についてネットで意識調査を行ったところ、圧倒的に導入を支持する人が多かった。
“サムの息子法”とは、1976年に大手出版社がニューヨークで起きた連続殺人事件の犯人に手記を書かせて売ろうとしたことがきっかけで制定された法律だ。犯罪者が犯罪行為を基に手記を書くなどして収入を得た場合、遺族など被害者側の申立てにより、手記出版による収益を取り上げることができる。
日本でも、憲法が保障する表現の自由により、事件関係の出版を一律に禁止することは憲法違反のおそれがある。だが、出版行為を認めた上で犯人が出版により得る収益を没収するという“サムの息子法”ならば導入できる可能性は高い。
Yahoo!ニュースによる意識調査で「あなたは“サムの息子法”を日本でも導入すべきと思いますか?」というアンケート調査を行ったところ以下のような結果となった。
■「サムの息子法」を日本でも導入すべき?
・「導入すべき」:90.8%(244,786票)
・「導入すべきでない」:5.4%(14,685票)
・「分からない」:3.8%(10,163票)
(Yahoo!ニュース 意識調査調べ 対象は269,634人。実施期間:2015年6月17日~2015年7月7日)
およそ27万人がアンケートに答えるという関心の高さが注目される。結果としては「導入すべき」が90.8%と圧倒的に支持された。寄せられたコメントは488件もあり、さまざまな意見が見受けられる。
「自分の犯罪行為を自身で本に? 理解不能」などのあり得ないという意見が基本にあるものの、「このような手記が遺族の反対を他所に出版され収益を得るということはあってはならないと思う。一方で加害者意識の研究材料としてはこれ以上ないものでもあるのは事実」や「犯罪者が書くからいい受け取り方はしないけど、これが犯罪心理って名前の本だったらどうだろう? 興味がある人が少なからずいるのではないだろうか?」との考え方もある。
また、「お金ではなく、出版することに規制をかけてほしい」とあるように“サムの息子法”を導入しても犯人による手記が世に出ることに変わりは無い。『絶歌』について新聞社のインタビューに応じた被害者の遺族が、出版前に何の連絡もなかったことや、犯人が実名で書かなかったことに「残念」「卑怯」などの気持ちを明かしている。遺族のことを考えると出版自体が許されるのか疑問だ。
アンケートの回答者から「日本人の恥という文化が失われていきますね。残念ですね」と嘆く声も見受けられた。法律で規制する以前に、心のあり方を見直す時なのではないだろうか。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)