2014年大晦日の『NHK紅白歌合戦』にKABA.ちゃん率いる“桃組”が登場し、オネエタレントらがショーを繰り広げた。今までもEテレの福祉情報番組にて性同一性障害や同性愛を取り上げていたが、最近のNHKは娯楽番組にオネエタレントが起用されることも珍しくなくなっている。だが今回「介護報酬削減」を扱った朝のニュース解説番組に、女装タレントがコメンテーターとして登場していたことに驚いた視聴者もいたようだ。
1月17日放送の『週刊ニュース深読み』(NHK総合)でのことだ。「映像的には異物混入している感じなんですけど」と挨拶した、女装タレントでエッセイストのブルボンヌ。この日のテーマは“介護報酬削減 誰が担う? どう担う?”、ゲストは介護問題に詳しい専門家3名とブルボンヌ、そして落語家の桂文珍である。
ブルボンヌは1971年生まれ、早稲田大学第一文学部を中退とされている。大学在学中からゲイのためのパソコン通信「UC-GALOP」を立ち上げたり、女装パフォーマンス集団「アッパーキャンプ」を結成するなどリーダーシップを発揮。この頃から、“ブルボンヌ”と名乗るようになったようだ。その後はゲイ雑誌の編集に携わったり、新宿二丁目のバーでママとして働いたりしながら、徐々にエッセイストとしても女性誌を中心に活躍するようになっていった。
『週刊ニュース深読み』の視聴者の中にはブルボンヌと紹介されてもピンと来なかった人も多かったらしく、ツイッター上では「誰?」「ミッツ・マングローブじゃないの?」という戸惑いの声が見受けられた。
このようにマツコ・デラックスやクリス松村といったオネエタレントに比べて、ブルボンヌの知名度はまだまだ低い。しかし現在、NHKラジオ第1の『午後のまりやーじゅ』では木曜パーソナリティを務め、Eテレの『ハートネットTV』にも何度か出演。また『ハートネットTV』が開設した動画サイト「ひとりぼっちのあなたへ」では、生きづらさを抱えたときの苦しみや対処法などを語るメンバーとしてオネエタレントからただ一人ブルボンヌが選ばれている。どうやらNHKは彼を「LGBT」(性的少数者)のリーダー的存在として、日本の社会問題について公の場での発言を期待しているようだ。
ただし、中には女装タレントに問答無用で嫌悪感を抱く視聴者もおり、今回の『週刊ニュース深読み』へのブルボンヌの出演に異論を唱える声もツイッター上にはある。だが「ブルボンヌさんはとても真摯な態度で知識もあり、介護の話題に適切な人選だったと思います」、「介護職の気持ちを考えながら喋ってる、経験者としては、嬉しい限り」と介護問題に関する彼の発言には、好意的なツイートも多かったのだ。近親者や自身の介護問題を真剣に考え、議論する場に様々な生き方をしてきた人たちが参加することは大事である。
(TechinsightJapan編集部 みやび)