身体全身からみなぎるパワーが物すごい男がいる。ロックバンド「RIZE」のドラマーとしても名高いミュージシャンで、今ドラマに引っ張りだこの俳優の金子ノブアキだ。音楽と芝居の相乗効果により彼の勢いはとどまることを知らない。今回、10代の頃からの長い付き合いがあるという市原隼人と共演し、熱い男を演じた金子が心に秘めた思いを語ってくれた。
『ストロベリーナイト』『ジウ』を超えたと呼び声高いベストセラー作家・誉田哲也の最もハードな警察小説『ハング』が、定額制動画配信サービス「dビデオ」にて完全ドラマ化。巨大な闇に立ち向かう、若き刑事の中でも“キー”となる熱い刑事を金子が演じている。
■骨太ができる、やることに胸が打たれた
──映像化は不可能とまで言われている誉田哲也さんの『ハング』の話を聞いた時の感想をお聞かせ下さい。
金子:実写化、それだけで十分衝撃的で携帯配信のコンテンツっていうのが素晴らしいと思いました。フットワークの軽いメディアなので、今まで恋愛ものとか軽いものが多かったのですが、こういう骨太のものができるんだ! やるんだ!っていう気持ちにすごく胸を打たれ、是非やらせて頂きたいと思いました。
■男だけの現場は得意
──男の熱い友情、アクション、サスペンス、葛藤など色々なものが盛り込まれたドラマですよね。
金子:現場はとにかくむさくるしかったですね(笑)。蓮佛美沙子さんもいたけど僕は1日か2日、悲しい場面でしか会ってなくて、基本女優さんのいない男性だけの現場でしたが僕はそういうのが好きで得意です。主演の市原隼人くんと平川雄一朗監督の存在もすごくやりやすかったです。
平川監督とは金子が子役時代に(平川監督が)ADで一緒に仕事がしたことがあったという。バンド活動で芝居の現場を離れた時期もあった金子は、ブランクがあって戻ってきた時に取り組む目標の一つに昔お世話になった人、迷惑をかけた人にお返しできたらという思いがあると姿勢を正して言った姿が印象的であった。
■お世話になった人に「何でもやりますよ」
金子:僕は忘れていたのに監督は覚えていてくれて、22、23年振りの再会だったんです。再会できる喜びは大人になるほど大きくなっている感じがします。今回はため(期間)が長かったので喜びもひとしおでした。戦力になれたらと身を呈してどんどん崩れていこうと(笑)。すごく日焼けしたところは、ものすごくドーラン塗りたくって、顔は真っ赤だけど、喜んで何でもやりますよと現場で臨んでました。
■持っている関係性を出すにはいいタイミング
──今回の金子さんの役は情に厚い三枚目でムードメーカーのキャラですが、自身と比べて似ているところはありますか? またこの役に対して苦労した点はありますか?
金子:ちょっと似てると思います、酔っぱらった時とか。テンション的には(笑)。こんな人が友達でいたらいいなって思いながらやりました。
金子:(市原)隼人くんが10代の頃からライブに来てくれてミュージシャンとしてずっと交流があるんです。バンドで(市原が)主演の作品の主題歌をやらせてもらったり、彼はラップをするのでライブに出てもらった事もあります。僕が敵で殺し屋だったらそういうわけにもいかないのだけど、今回は(市原と)相棒という形なので、元々持っている関係性を出していくのにいいタイミングだったと思います。実際、そういう感じを出せると撮影で良かった時も多く、何となく匂い立つ雰囲気が出てくるので、それは意識せずともそのままやろうかなと日々、撮影の中で考えていました。
今月20日の札幌を皮切りに「RIZE」のツアーが始まり、3日から「玉川区役所 OF THE DEAD」のドラマも始まった金子は、ツアーに撮影にと多忙を極める。
■違う刺激がプラス
──以前「役者の仕事を増やしたのは自身のバンド活動の成長のため」とのことでしたが、今もその想いは変わりませんか。
金子:益々そう思います。一つになるというよりは、ミュージシャンと役者それぞれ違う幹が育っているようなものなので、違う枝葉が伸びてきています。昨今の不景気が叫ばれる中、音楽に喜びを見出すということが作り手としてはものすごく難しい時代になっている気がします。僕は両親が音楽家なので一番自然な姿というのは、音楽をやっている時で最終的には魂が帰る場所なのですが、僕も飽きっぽいしそれだけだと頭打ちになっちゃうタイプ。違うことをやることによって、違う刺激をもらえるということはものすごいついてる環境だと思います。
金子:今、どちらも居心地がよくなってきていて、33年の自分の人生でその時は何でこんなことやらなくちゃならないんだということが、ある地点で実を結んだりするので人生っていうのは分からない。音楽やっている時は本当に楽しく、ストレスフリーでそれが伝染するんですね。今回配信で新曲出したらすごく反響が良く、iTunes総合で1位取ったり。時代の流れとあっているやり方に転がりこんでいる気がして、すごく充実しています。何も変える必要がなく、何かこうしなくちゃという具体的なのがない、このままみんなで頑張ればいいよと言われている気がします。
■音楽に救いを求めている
金子:子役時代は辛い思い出の方が多かったので、音楽に戻れると懐かしかったり、すごく安心できる母親の胎内にいるような家に帰ってきたような感じがしますね。大人になるとこういう感覚ってなかなか得難くてとても重要で、そのためにやっていますね。僕は音楽に救いを求めていますから、演者ですけど色々な音楽に救われてきたし、救われるために雨宿りをするためにわざわざ雨を降らしているような感覚ですね。
金子は歌手の金子マリを母親に持ち、父親はドラマーのジョニー吉長と音楽一家の中で育ったサラブレッドである。「RIZE」のベーシストとして、音楽界では「若き低音のカリスマ」と言われる程の実力の持ち主の弟のKenKenをミュージシャンとして尊敬していると言う。亡くなった父親から「直接教わったことはない」と語ったが、「背中を見て育ったというのは何よりも英才教育だった」「ライブの現場でアンプのシンクが焦げる匂いが懐かしいって思うのは役得でしかない」と嬉しそうに語った金子は、この日一番の笑顔を見せた。
「親父には逆立ちしても一生追いつけない」「最期に見ている景色はどんなか? どういう地点にいるのか誰も行ったことがない道を行くのがモチベーション」、「職人気質を忘れずに行けたらいい」という金子は、これからもずっと走り続け、ミュージシャンと俳優という違う幹を更に太くし、枝葉を伸ばし沢山の色とりどりの花を咲かせてくれるであろう。目を離さず、これからの活躍をずっと見ていきたい。
dビデオ概要
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『ハング』
◆出演者 市原隼人/金子ノブアキ、山本裕典、蓮佛美沙子、浅利陽介、森岡豊/相島一之、高橋努、石橋蓮司/時任三郎
◆原作 誉田哲也『ハング』(中央文庫)
◆演出 平川雄一朗「ROOKIES」「JIN-仁―」
◆主題歌 三浦大知『Bring It Down』SONIC GROOVE
◆URL http://video.dmkt-sp.jp/ti/10008609
(TechinsightJapan編集部 うめ智子)