日本でも世界でも広く生息し、最近では「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」の原因とも言われているマダニ。そのマダニに、なんと肉アレルギーを引き起こす可能性が秘められているという。日本でも今後、肉アレルギーを持っている患者についての調査が進められるのではないだろうか。
焼肉が大好きな方には、“肉アレルギー”などというものがこの世に存在し、場合によっては誰もがそれになる可能性があると言われても、にわかには想像がつかないであろう。これまで突然発症するもなかなか原因がつかめないとされてきた“肉アレルギー”。それを起こしたことがある人は、高率でマダニに刺された過去があるということが分かってきたそうだ。
アメリカでは今、中東部に生息するローンスター(英名Lone Star)と呼ばれるマダニに刺されてできた抗体が原因となって、“肉アレルギー”が起きるとの説がかなり有力視されている。2011年以降、米東海岸で肉アレルギーを起こした数千人の患者についての調査を行っていた「バージニア大学」の研究チーム。検査により90%の人がマダニに対する抗体を持っていることが判明したとして、「肉アレルギーはマダニ抗体と関係」という仮説を2012年に発表していた。今やその患者は中東部のみならず、全米に広がっているそうだ。
マダニの唾液には、赤身肉(米国でいう赤身肉とは牛・豚・羊など)にも含まれている、ある糖質が含まれている。それがヒトの体内に入ると抗体が作られ、そんな人が赤身肉を摂ればアレルギー反応を起こすというわけだ。皮膚にかゆみが発現するだけで済めばよいが、口腔の灼熱感や喉、気道が腫れるなど重いアナフィラキシーショックを起こす例もあるため、食物アレルギーは決して侮れない。筆者の友人も以前に牛肉を食べてひどいアレルギーを発症し、それ以来赤身の肉を避けている。アレルゲンを調べるために血液検査をしたところ、マダニの抗体があることを指摘されたとのこと。「考えてみると、猫を飼い始めて少しした頃のことだった」と話している。
ちなみにマダニといえば、最近の日本では、九州・四国・中国・近畿地方で重い感染症「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」の発症例が増えている。SFTSウイルスを保有しているマダニ(具体的にはタカサゴキララマダニ、フタトゲチマダニ、キチマダニ、オオトゲチマダニ、ヒゲナガチマダニ等)に刺されて発症するものだが、死亡例もあとを絶たないことから恐れられるようになってきた。マダニによるSFTS感染症を予防するには、キャンプ、登山、農作業の際に肌を出さない、草むらなどに座る際にはビニールシートを敷く、ペット(特に犬)にはダニの予防薬を使用する、草むらで散歩させないなどの心がけが大切だという。
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(TechinsightJapan編集部 Joy横手)