手足の神経に麻痺を残すことで恐れられているポリオ(急性灰白髄炎)の患者が今、南アジアの国々で多数確認されていることを世界保健機関(WHO)が発表。ワクチンの接種を徹底するよう呼びかけられている。
1960年に大流行をみたものの、現在の日本では発症がほぼゼロというポリオという病気。急性灰白髄炎とも呼ばれ、ポリオウイルスに感染すると腸管で増殖し、最悪の場合は手足の運動麻痺が残り治療法はない。その対策としてウイルスの毒性を弱めた「生ポリオワクチン」が存在したが、日本では2012年9月からそれが中止となり、現在は毒性を持たない「不活化ポリオワクチン」の4回接種が行われている。ただし初めて受けたものが生ポリオワクチンであったり、不活化ポリオワクチンにも単独接種タイプや4種混合タイプがあることから、保護者の間で混乱や疑問が多いワクチンだと言われている。
このほど世界保健機関(WHO)はパキスタンでそのポリオが流行中だとして、この国および世界各国に向け、ポリオワクチンの接種を徹底するよう呼びかけた。世界における昨年のポリオ発症数417のうち5分の1がパキスタン人であったが、今年の発症数は現在までに74例で、パキスタン人はそのうち59人にもなる。そのため旅行や出張などで国外に出るパキスタンの国民には空港内でポリオワクチンを接種し、その証明書を携帯させるという案も検討されているもようだ。またポリオはアフガニスタン、ナイジェリアでも流行の兆しを見せており、海外渡航者によりそれがイラク、イスラエル、シリア、エジプトに広がっていることが確認された。
ポリオは、感染者が教育施設や公共のトイレなどで排便した後に不衛生な手でドアノブなどに触れ、次のトイレ使用者の手指にウイルスが付着。その手をよく洗わずに食事をするなどして感染することが多い。だがポリオが流行している国に滞在してウイルスに感染したとしても、ほとんどが不顕性感染者(発症の自覚がないまま細菌やウイルスの保菌者として感染源になり得る)となり、そのまま帰国した場合、予防接種が徹底されていない国ではポリオが流行する可能性がある。ちなみに国連は「2018年までにポリオを完全撲滅する」といった計画を打ち出していた。
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(TechinsightJapan編集部 Joy横手)