東日本大震災と原発事故をテーマにした映画『家路』が公開中だ。本作の鑑賞イベントでジャーナリストの津田大介氏は、3.11後に震災を描いた作品を見てきたが「お世辞抜きでこの映画が一番」とコメントしている。原発事故によって立ち入り禁止区域となった実家に帰る、架空の人物を主人公にする発想は意外だった。ドキュメンタリー作品で知られる久保田直監督があえて架空の作品を撮ったことで、被災者の本音に迫ることができたのではないか。映画『家路』のFacebookでは、作家の山本一力氏や音楽プロデューサーの小林武史など様々な著名人によるコメントが紹介されている。また、ツイッターでは映画を観た感想が続々とつぶやかれており、本作によって何かを感じ考えた者がじわじわと増えていることが分かる。
松山ケンイチ、内野聖陽、田中裕子、安藤サクラなどが出演。久保田直監督による映画『家路』が、3月1日から公開されている。東日本大震災から3年目の3月11日にはメディアでも復興に向けた話題を取り上げたが、12日以降は普段どおりというのが現状だ。
あらすじに触れておくと、東京に住んでいた青年・次郎(松山)が原発事故により立ち入り禁止区域となったエリアにある実家に戻り、認知症が進む母も一緒に暮らし始める。次郎と異母兄の総一(内野聖陽)は妻(安藤サクラ)や娘と仮設住宅で暮らしながら次郎の行動に動揺する。そんな家族と周辺の人々の葛藤が描かれていく。放射能は見えない。その分、立ち入り禁止区域で田植えをするシーンの美しさに胸を打たれる映画だ。
音楽は加古隆(作曲家・ピアニスト)が担当。Salyuが歌う主題歌『アイニユケル』は小林武史の作詞・作曲・編曲による。ツイッターには「つらい、つらすぎる。見終わったあともモヤモヤする。松山ケンイチと田中裕子はいい味出してた。エンディングのSalyuの曲も良かった」と映画を観た感想がつぶやかれているように、切実な内容とあいまって音楽も心に響く。
『Facebook 映画「家路」』では小林武史のコメントも紹介されており、「“そこ”にある問題は大きいけれど、自然の風景とともに兄弟や家族、町や村の社会などの不器用なまでの営みや日常が、ときに愚かに、だけど愛おしく健気に繋がりながら“何か”を伝えようとしている。そんな素敵な映画だと思います」とある。
また、作家の山本一力氏は「でしゃばらない筋立てと篤い(あつい)役者の演技が融合したら。感涙、とどまるを知らずか」とコメント。脚本家の小山内美江子氏は「家路をたどって母の許に帰りたいと切に思わせる映画だった。だが、母はもう亡く家路はビル街に変貌して迷子になった私に優しい映画だった。だから遠慮なく泣こう」と感動を伝えている。
他にも多くの著名人からコメントが寄せられているが、自身の人生体験によって映画から感じるところも違ってくる。一般の視聴者からも「いい映画だったなあ。観てよかった。松山ケンイチはやっぱり素晴らしい」、「しみじみいい映画だったと終わらせられないものに締め付けられるのだけれど。2人の場面、が良かった…」、「震災のこともテーマに入ってるけど、それだけじゃない何かを感じられて良い作品でした」とつぶやかれており、それぞれの受け止め方がある。
映画『家路』は3月1日から全国ロードショーとなっているが、エリアによってはまだ公開されていない劇場もある。4月19日や5月31日、6月7日公開という劇場もあるが、できるだけロングランとなって欲しい作品だ。
※画像はYouTubeのスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)