一般的な画材や素材から日用品、あるいはゴミのような物まで、現代美術作品ではありとあらゆるものが材料として使用されてしまう。こうした傾向のせいだろうか、これらの作品はごく稀ではあるが、展示されている美術館においても“作品”と見なされずにひどい扱いを受けることがある。イタリア南部の街バーリの美術館でもこのたび、展示されていた現代美術作品を清掃員がゴミと間違えて捨ててしまうという出来事が発生した。
新聞紙、ダンボールそして床の上に散らばったクッキーのかけらから成るこの作品は、作者は明かされていないが、現代社会において人の環境に対する意識を喚起するメッセージが込められたものであったと、『BBC News』は20日付で伝えている。
だがバーリにあるサラ・ムラット美術館の清掃員は、これが“芸術作品”であることに気がつかず、ゴミとして処分してしまったのだ。19日朝の開館時に作品の大部分の紛失を警備員によって発見されたが、既に後の祭りであった。
その後の調査で、清掃員はこの作品を同美術館で行われる風景展の設置作業で発生したゴミであると思い処分したことが明らかとなった。また清掃員が所属する清掃会社の担当者も、「彼女は自分の仕事を行っただけだ」と主張している。
現代芸術と環境との相互関係の解釈を可能にした芸術家のこの作品には保険がかけられていたとはいえ、その被害総額は約1万ユーロ(約140万円)にも上ると言われており、美術館の担当者は、清掃員は明らかにこの作品の価値を認識しておらず、この出来事について非常に残念であると語っている。
現代美術作品に対する研究や展示に意欲的なヨーロッパでは、一方で今回と同様の出来事が多発しており、2001年と2004年にはイギリスで、1986年、1998年そして2011年にはドイツの美術館に展示されていた“芸術作品”が、勘違いから処分されている。
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(TechinsightJapan編集部 椎名智深)