ヨーロッパの多くの国が同性愛及び同性愛者に対して寛容な姿勢を示す中、ロシアでは同性愛は犯罪とみなす法律が存在し、民間レベルでも同性愛者に対する暴力的な問題が頻発している。このたびロシアで反LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)を掲げるネオナチグループが、同性愛者である外国人男性を迫害する様子を撮影し、インターネットにその動画をアップしたことが物議を醸した。
今月6日、BuzzFeedやロシアの動画サイトRutubeに、西部の街ベルゴロドに拠点を構える反LGBTグループ『Okkupaj Pedofilyaj (Occupy Paedophilia)』によって1本の動画がアップされた。
「ロシアの反LGBT活動家達が南アフリカ人大学生に恥辱を与える」というタイトルの約30分にわたる映像だ。動画の中で展開されていたのは、このメンバーによって裸にされた1人の外国人男性が、髪の毛をバリカンで剃られたり顔にスイカを押しつけられたり、さらにはビール瓶を喉に突っ込まれオーラルセックスの真似をさせられるなど、陰湿な虐待を受けている様子であった。
『Independent Online』では、外国人男性は南アフリカ出身でベルゴロド大学に交換留学生として滞在しており、同性愛者のための出会い系サイトに偽のパートナー募集記事を投稿したグループのメンバーにおびき寄せられ、何時間にもわたり虐待を受けたと報じている。
ロシアでは同性愛者を守るための法律は存在していないため、警察ですら頼りにならない。現に男性はベルゴロド大学に被害に遭ったことを訴えたものの、庇護されるどころか逆に大学から追い出される羽目になってしまったのだ。
問題の動画を見た南アフリカ・プレトリア在住の弁護士でありゲイコンテスト『ミスター・ゲイ・ワールド』の審査員でもあるCoenraad Kukkuk氏は、「同性愛者だけでなく外国人差別にも繋がりかねない。こうしたことがまかり通るロシアの現状は、無法者に犯罪を起こす機会を与えているようなものだ」とコメント、在南アフリカロシア大使に抗議の手紙を送付したという。Kukkuk氏は同時に南アフリカ政府や外務省に対しても、南アフリカ人のロシアへの渡航警戒の呼びかけを要求すると共に、2014年にソチで行われる冬季オリンピックのボイコットも訴えた。
だが彼の要求に対する外務省の反応は鈍い。外務省は『Independent Online』の取材に、Kukkuk氏からの手紙はまだ受け取っていないと述べ、手紙の内容を確認したうえで動画についての調査を開始することになるであろうと話している。
(TechinsightJapan編集部 椎名智深)