「やむにやまれず」という言葉があるが、困り果てた状況に陥ると、突拍子もない悪知恵が働いて強引な手段に出る人間がたまにいる。このほど中国は西安市で、ある親子がとんでもない演技をして夫の入院先である病院に迷惑をかけた。
中国の陝西省西安市にある病院で、危篤の状態となってICUに移された75歳の患者Xu Wanfanさん。妻ほか家族は、夫の銀行口座に入金される年金で家計をやりくりしていたが、ATMからの預金引き出しにあたり、暗証番号の入力を3回連続して誤ったため口座が自動的にロック。そこから“事件”は始まった。
窓口に泣きつくも、行員は「口座名義のご本人が来店して手続きを。それまでロックの解除はいたしません」と説明。夫は自力で来ることが出来ないし、タクシー代もない。困った妻はふと考えた。ではアレを利用するしかない…と。そう、彼女と家族は病院のある人物に声をかけ、悲痛な面持ちでこう訴えたのである。
「夫には間もなく“お迎え”が来るんです。ここではなく、せめて自宅で看取ってあげたい。」
こうして瀕死のXu Wanfanさんの身は救急車へと移された。「あそこを左折、ここを右折」と家族の誘導する通りに救急車を走らせた運転手は、例の銀行のところで突然止まるよう告げられる。続いての指示は、なぜか夫をストレッチャーに寝かせたままガラガラと店内へ運び込むことであった。
そして「この人が口座の名義人、私の夫よ。どうぞ、なんなりと確かめて!」と窓口に向かって言い放った妻に、行員は約束通りロックを解除した。目の前の事態に呆気にとられた顔を見せる救急隊員。しかし妻の口から出た言葉は「騙してゴメンナサイ」ではなく、次の行き先についての指示であった。
「私達よく考えてみたんだけれど、自宅で看取るのはやっぱり難しそうだわ。もういいから病院に戻してくれる?」
病院は今、救急車を不正に利用した妻と家族に対して損害賠償を求めて訴える構えをみせている。しかし妻は「冗談じゃない。元はといえば銀行が面倒なことを要求してきたから。ロックされている間、家賃も支払えなかったし食べ物を買うことすら出来なかったのよ。そっちに請求して!」とあくまでも強気だ。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)