エンタがビタミン

writer : maki

【エンタがビタミン♪】さだまさし、25年前の曲にいま続々ツイートのワケ。自身は「妥協の産物」とも。

去る9月3日に音楽番組『火曜曲!』が最後の放送を迎えた。最終回にして初出演となったシンガーソングライターのさだまさしが、名曲と呼び名の高い『風に立つライオン』と『主人公』を熱唱。共演者も息を呑んで聴き入った。ツイッターでも「感動した」という感想が多数つぶやかれている。リアルタイムで聴いていた世代から、道徳の授業で歌詞を読んだという者までその内容も様々だ。

『風に立つライオン』は、さだまさしが歌手デビューする前に知り合った外科医・柴田紘一郎氏の体験談をもとに書かれた詩だ。柴田氏はアフリカ・ケニアに赴任して医療環境の整っていない現地で健気に生きる人々の姿や、広大な自然に感銘を受けた。同曲はアフリカで医療活動に従事する青年医師が、日本に残した恋人からの結婚報告の手紙に対する返信という形をとっている。そこに書かれるのは柴田氏が体験したアフリカの人々や大自然であり、それは日本が失ったものだとも歌われている。彼はそんな大地での暮らしは辛いこともあるが幸せだと伝えながら、彼女の幸福を祈る。

長編の作品ではあるが、さだが歌い上げることで聴く者に広大なアフリカの大地や風を思い描かせ、その世界に引き込まれて時間を忘れてしまうほどだ。間奏とエンディングに『アメイジング・グレイス』が効果的に使われており、さらに壮大な歌となっていく。

この日『火曜曲!』のスタジオでは、彼の生歌を目の当たりにしてレギュラーの江角マキコやゲストのJUJUは涙をこらえて聴き入っており、SMAPやKis-My-Ft2、AKB48のメンバーも瞬きを忘れるほど集中していた。

1曲目を歌い終えたさだは、「25年経っても、この歌を大切にしてくださる方がいることに感謝します」とコメントした。2曲目の『主人公』はファン投票1位の楽曲であることから、「30年以上この曲より良い曲が作れなかったとは思いたくないが、歌というのは思い出と共に成長していくのでね、そういう人は昔からの歌に思い入れがあります…」と語り、歌い始めた。

『主人公』は学生時代に別れることとなった大切な人を、人生半ばで思い出す女性を歌っている。同曲は今年行われたウェブ投票『あなたが選ぶ さだまさし国民投票』で1位に選ばれた。投票した50代の女性は「私にとって生きることの応援歌であり、自分を大切にし、人を大切にすることの大事さを常に考えさせてくれる歌です」と話している。

さだまさしがこの2曲を歌い上げると、感動の空気に包まれたのはスタジオだけではなかったようだ。ツイッターでは「『風に立つライオン』大好きです! 小中学生のころ、ひとりでさだまさしコンサート行ってました。聴くたび涙したな…」、「『風に立つライオン』、『主人公』ともに名曲、ライブでも何度も聴いているけど色褪せない」と昔から聴いていたファンも改めて感動していた。

「『風に立つライオン』、道徳の授業で歌詞読んだことはあったけど。これヤバイな」、「いかん。『風に立つライオン』で泣いてしまった。初めて聞いたのに」と初めて聴いて感動したという者も多い。

中居正広から「歌詞を作るにあたって自分で心がけていることは?」と問われたさだは、「聴いてくださった時に綺麗に聞こえる言葉を選ぶこと。同じ意味の言葉だったらできるだけ綺麗な言葉、それから複雑な意味を持っている言葉を選ぶ」、「メロディーの制約があるんでなかなか思い通りの言葉を選べない。そういう時は苦しみますね。妥協の産物なので、詞だけ読まれるとすごく恥ずかしいんです」と笑っていた。

『風に立つライオン』や『主人公』をはじめとする彼の楽曲が心を打つのは、歌詞ひとつひとつにも彼ならではのこだわりがあるからだろう。さらに「歌うにあたって心がけていることは?」と尋ねられて、さだは「一生懸命、毎日ステージに上がる時に『昨日よりちょっと上手になりたいな』と思って上がってる。それがお客様に伝われば、一緒に小さな階段でもいいから一歩ずつ上がっていけたらいいなと思ってやってきました。たぶんこれからもそのまんまやっていくと思います」と答えた。

デビュー40周年を迎えた彼は、毎日そう考えて歌って来たのだ。積み上げてきた歌とこだわりぬいた歌詞を歌い上げた時、人々は聴き入り感動して涙するのだろう。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)