将棋棋士で投資家の桐谷広人さんが昨年、バラエティ番組に取り上げられたことをきっかけに注目を集めている。彼が最もユニークなのは、株主優待券をフル活用して食事や娯楽を満たして生活するところだ。しかしそこには彼ならではのこだわりがあった。数々のバラエティ番組が桐谷さんの行動を追ったことでその人柄が伝わることとなり、人気が高まっているのだ。
2012年12月の『笑っていいとも!』で桐谷広人さんが「約600社の株主であり、約400社の株主優待を受け取っている」、「生活のほとんどをその株主優待によって過ごしている」と紹介された。お金持ちには見えない普通の風貌で、「そろそろ株をやめて結婚したい」と明かすギャップのあるキャラクターが話題となった。
その後も『いいとも』に出演した桐谷さんは、今年に入ると村上信五(関ジャニ∞)とマツコ・デラックスがMCを務める『月曜から夜ふかし』で度々取り上げられている。同番組では桐谷さんが、東京の街を自転車で縦横無尽に疾走して活動する姿を映したのだ。
彼は株主優待券の有効期限を全て把握しており、出来る限り無駄にしないように映画館の掛け持ちさえも分単位で行うのである。60歳超とは思えぬエネルギッシュな自転車の立ちこぎで、店から店をはしごする桐谷さんのバイタリティー溢れる姿に感動を覚えた視聴者も多いはずだ。
桐谷さんは現役を退いたものの、今も日本将棋連盟に所属するプロ棋士である。現役時代には囲碁・将棋チャンネルで『桐谷広人の将棋講座』を担当する活躍ぶりで、2000年には現役勤続25年表彰を受ける真面目な棋士だった。ところが米長邦雄永世棋聖に傾倒して20年以上仕えた桐谷さんだが、婚約者を愛人にされてしまう目にあった。桐谷さんは後に週刊誌で、「米長邦雄は私の婚約者を寝取った」と告発することになる。
財テク棋士として知られていた彼が、現役を引退して株主優待で生計を立てる生活を選んだのは棋士時代のこういった悲しい出来事が関係しているのではないか。
そんな桐谷さんが、今年に入ってバラエティ番組で人気が上昇することとなったのだ。8月には日本将棋連盟も早速“桐谷七段うちわ”を発売しており、17日には渋谷区千駄ヶ谷にある将棋会館にて“桐谷七段うちわ発売イベント”も開催された。
9月9日の『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)で、そのイベントの内容が放送された。“桐谷七段うちわ”を315円で購入した者が参加できるそのイベントの特徴は「桐谷さんが自転車に乗って現れる」、「うちわに桐谷さんがサインと印鑑を捺してくれる」、「桐谷さんのトークショーと質問コーナーがある」、「桐谷さんと集合写真が撮れる」というものだ。
イベント当日は晴天に恵まれ、桐谷さんが自転車を立ちこぎして颯爽と登場すると、集まったおよそ50人の参加者がカメラを構えた。会場では「おはようございます。たくさんの方に集まっていただきどうもありがとうございます」とあいさつしてうちわにサインして印鑑を捺した。
中でも桐谷さんの魅力が際立ったのが、トークコーナーだった。桐谷さんは優待券で回転寿司を食べに行った時のことを、「ウニとイクラが大好きですが、そればかり食べてはたぶん(店が)原価割れする。だから、安めの品も食べるように配慮しています」と話した。投資家として店の経営を考えており、自分本位ではないのだ。
来場者の男性から「焼肉を食べに行った時に23円を支払うという話を聞いたが、23円を払わずとも食べられる方法があるのでは? ジェフグルメカードを使ったりとか…」と質問が出た。桐谷さんは「もちろんそうです。私もジェフグルメカードを大量に持っています」、「23円を払わずに500円のジェフグルメカードを出せば、477円のおつりももらえる」と説明した。
しかし彼は「おつりはくれるが、タダの優待券で食べた上にさらにおつりまでもらっちゃ悪いから」と、ジェフグルメカードをあえて使わない理由を明かしたのである。株主優待で生活するにしても数に任せて使いまくるのではなく、お店の経営も考えながら使用するのが彼の流儀なのだ。
最後は会館の駐車場で「この辺をぐるぐる回ってみましょうか」と、自転車に乗ってみんなに写真撮影させるサービスも飛び出した。「今度は、逆回りしてみます」といった気配りも欠かさない。そんな桐谷さんの人柄が彼の人気を押し上げているのだろう。
来場者の女性は「トークは将棋の話がほとんど無くて、優待券とムダ話ばかりが続いたけど楽しかった」と感想を述べている。また男性からも「とにかく良い! 見ていて癒されます」と絶賛されており、桐谷さんの人気はまだまだ続きそうだ。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)