『ゴジラvsキングギドラ』など怪獣映画ゴジラシリーズで長年ゴジラのスーツアクターをして活躍した薩摩剣八郎氏がテレビ『情報ライブ ミヤネ屋』のインタビューを受けた。「13度死にかけた」という彼のゴジラにまつわる体験が語られると共に、1985年に北朝鮮の怪獣映画に出演したいきさつや現地での生活について貴重な証言も聞かれた。
日本を代表する怪獣映画ゴジラシリーズの中でも公害問題を扱った『ゴジラ対ヘドラ』(1971年)はゴジラが敵のヘドラに完膚なきまでにやられるショッキングな展開となる。最後はゴジラが勝利するのだが、ヘドラの不気味な強さは印象的だった。そのヘドラのスーツアクターとしてデビューしたのが薩摩剣八郎氏である。
その後、『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』でやはりゴジラを手こずらせる強敵、ガイガン役を演じるなど活躍した彼は1984年のゴジラ誕生30周年記念映画『ゴジラ』でとうとうゴジラを演じる。以降、『ゴジラvsキングギドラ』(1991年)、『ゴジラvsモスラ』(1992年)など数々のゴジラを演じてきたのだ。
その薩摩剣八郎氏が8月14日に放送された『情報ライブ ミヤネ屋』でインタビューに答えた。現在はゴジラのスーツアクターから引退している薩摩氏は、「元ゴジラのスーツアクター」だと名乗った。彼はこれまでに数々の映画でゴジラを演じてきた中で「モスラの金粉が着ぐるみの中に入ってくるのでビニール袋を被っていたら窒息しそうになった」、「新品のゴジラを着たら接着剤の臭いでシンナー中毒になりそうだった」などのスーツアクターならではの体験を語った。
その気合が乗り移ったかのように、彼が演じるゴジラは鬼気迫る破壊的な動きが魅力だ。そんな薩摩剣八郎氏の演技がある人物の目に留まり、「ハリウッド映画に出てみないか」という話が持ち上がった。乗り気で承諾したが、いざフタを開けてみるとそれはハリウッド映画ではなく北朝鮮が作る怪獣映画であった。
北朝鮮の政治家・金正日氏が薩摩剣八郎氏のゴジラに惚れ込んで依頼してきたのだ。その怪獣映画『プルガサリ』では、小さい頃の可愛いプルガサリはスーツアクター深沢政雄氏が演じて、成長して大怪獣となってからを薩摩剣八郎氏が演じている。城を破壊するシーンなどはまさにゴジラを思わせる迫力だ。
映画制作には特撮監督の中野昭慶氏やゴジラを手がけた東宝特撮チームも関わった。薩摩氏は制作期間中の北朝鮮での生活について「金正日氏の別荘で過ごした」、「料理や洗濯など身の回りの世話は全て若い女性がやってくれた」と明かした。レポーターから「喜び組のようなことですか」と問われると彼は「そこまではいかないが、身の回りの世話は全てやってくれましたよ」と笑いながら答えた。
金正日氏が自らプロデュースしたといわれる怪獣映画だけに、待遇も相当に良かったようだ。しかし、別の情報では日本人スタッフが部屋の中で「日本のビールが飲みたい」と“独り言”を言ったところ、翌日には冷蔵庫に日本産のビールが詰まっていたという証言もある。つまり、部屋に盗聴器が仕掛けられていたわけで、VIP待遇ながらも気が抜けなかったようだ。
薩摩剣八郎氏がゴジラのスーツアクターをしていた当時はスーツの重さで1回の戦闘シーンはおよそ3分が限界だったそうだ。今もウルトラマンや戦隊ヒーローものでスーツアクターによるシーンは見られるが、映画では怪獣もCGによるものが主流となってきた。しかし、限られた時間で、ある時は「死にそうな」目にあいながら演技するスーツアクターならではの魅力があるものだ。日本が世界に誇る“怪獣”にはこれからも頑張って欲しい。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)