EU発!Breaking News

writer : tinsight-yokote2

【EU発!Breaking News】サッチャー元首相の死を祝う歌、ダウンロード・チャートのトップに。(英)

“鉄の女”の異名で知られた、イギリスのサッチャー元首相が今月8日に脳卒中のため87歳で死去した。経済を立て直した偉大なる指導者として称えられた一方で、左派や若者たちの間で長くくすぶっていたのは、“鉄のように冷やかで野蛮”といったサッチャリズムへの怒り。これが今、音楽の形で爆発しているようだ。

1982年のフォークランド紛争では、その強硬姿勢により見事な統率力でフォークランド諸島をアルゼンチンから奪い返したマーガレット・サッチャー英元首相。しかし8日、その死が知らされるとスコットランドの都市グラスゴーでは若者や元の労働組合員らによる反サッチャー集会が開かれ、彼らはシャンパンで祝杯をあげる始末。元首相には大勢の反対派がいたという事実が、改めて浮き彫りになった。

そのような中で、イギリスの音楽界がちょっと興味深い現象を呈している。映画『オズの魔法使い』で知られる“Ding Dong! The Witch Is Dead”という1939年の古い歌が、なぜかiTunes-UKチャートのトップに躍り出たのだ。さぁ皆でお祝いの鐘を鳴らそう。魔女が死んだのだから、なるこの歌。Facebookで「この国を真っ二つに裂いたあの魔女の死を祝おう」という呼び掛けがなされ、それがいっきに広がりをみせたことと関係があると見られている。

サッチャー首相の在任期間に自分は少年期だったという人気コメディ俳優のラッセル・ブランド(37)は、その死に「当時はすごく嫌いだった。こんな怖い女が自分の母親じゃなくてよかったとさえ思って見ていた」と語っている。フォークランド紛争のニュースばかりが目に飛び込んできたことや、国営だった公共事業を次々と民営化させ、各種規制緩和を進めるために労働組合を解散させパワーダウンさせたことで、親の会話や日々の暮らしが戦々恐々としていたことは人々の記憶にいまだ鮮明のようだ。

一方でまだその頃には生まれていなかったというアイドルグループ、「ワン・ダイレクション」などは“RIP(安らかに眠って下さい)”というアッサリとした表現にとどまっている。サッチャー首相の在任期間は、経済を中心にイギリスにとっては大きな過渡期であった。良くも悪くもこれだけ人々の印象に残る国家元首も珍しい。その存在感にだけは脱帽するべきではないだろうか。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)