エンタがビタミン

writer : maki

【エンタがビタミン♪】忌野清志郎が夜な夜な作った“パープル・ヘイズ音頭”。坂本冬美がHISの思い出語る。

生前の忌野清志郎から誘われて音楽ユニット・HIS(ヒズ)に参加した歌手の坂本冬美が、ラジオ番組で当時の思い出を語った。彼女はHISのアルバム収録曲「パープル・ヘイズ音頭」を聴きながら、ユニットメンバーの清志郎と細野晴臣が2人で夜な夜な苦心して制作したというエピソードを明かした。

音楽ユニット・HISは当時、ロックバンド・RCサクセションの活動を休止した忌野清志郎。はっぴいえんどやY.M.O.に参加して日本の音楽の最先端をいくミュージシャンとして知られる細野晴臣。そして当時23歳だった若き演歌の星・坂本冬美の3人からなる。坂本冬美は忌野清志郎から声をかけられてこの異色ユニットに参加したが、この経験がその後の彼女の音楽性に大きな影響を与えるのだ。

4月24日のFM番組『坂本美雨のディアフレンズ』(TOKYO FM)に出演した彼女は、1990年に開催されたイベント『ロックの生まれた日』に出演しないかと清志郎から誘われた頃を振り返った。面白そうなので引き受けたが、「そのかわり、セーラー服を着てもらうよ」と言われて驚いたという。このイベントがきっかけとなり細野晴臣を迎えてユニットHISが結成されたのだ。

しかし、坂本冬美はHISでロック畑の2人と音楽を作ることについて、どうやって歌えば良いか悩んだそうだ。そんな彼女に清志郎は「冬美ちゃんはそのままでいい。こぶしをまわすところはまわしていいし、唸ってもいいし、冬美ちゃんらしく歌えばいい」と言われて踏ん切りがついたのである。

HISが作成したのはシングル2枚とアルバム1枚だが、特にアルバム『日本の人』はオリジナル曲からロックの名曲をカバーしたものまで斬新な作品が詰まった名盤となった。その中でも遊び心満載の楽曲「パープル・ヘイズ音頭」はロックギタリスト、ジミ・ヘンドリックスの代表曲をカバーしたものだ。アコースティックな演奏はコミカルながらも原曲への敬意を忘れない高度なもので、そこに坂本冬美の歌がバッチリとハマる。

彼女は「この曲は、清志郎さんと細野さんが夜中にチョコを食べながら作ったらしいんです」と当時聞いた話を明かすと、「なんだか学生みたいに楽しくやってる感じ」と2人の生き生きとした姿を思い浮かべた。HISでは3人とも学生服がユニフォームだったのだ。

坂本冬美が「清志郎さんの詰襟も驚きだけど、細野さんの学生服姿は衝撃でしたね」と当時を振り返ると、父親(坂本龍一)とのつながりもあって細野晴臣を良く知る坂本美雨も思わず「細野さんもあの頃はまだヨーダじゃなかったですからね」と口にして笑っていた。

普段は演歌歌手として着物姿で歌うことが多い坂本冬美だが、「セーラー服を着ると、なんだか鎧を脱いだようで、本来の私の歌が歌えたような気がした」とも語っている。HISの後にヒット曲「夜桜お七」でニュー演歌ともいえるスタイルを気づいた彼女は、その後も多様な楽曲に挑戦している。「また君に恋してる」の大ヒットも、そんな彼女の歌い方に楽曲がマッチしたからだろう。HISでの体験が彼女の歌に与えた影響は大きいのだ。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)