古代ギリシャの哲学者アリストテレス。医学者でもあった彼がしたためたとされる、今から300年以上前に発刊されたある本がこのたびオークションに登場した。その内容とは、男女の愛の営み、セックスに関するハウツー本であった。
ソクラテス、プラトンと並ぶ世界最高の哲学者のひとり、「論理学」でおなじみのアリストテレス。大変博学であった彼が残したノートは、研究内容を公開するために正式に執筆したもの、対話を書きとめたもの、簡単にメモを残しただけのものを合わせると軽く500を超えていると言われており、その哲学は世界の文化や歴史、政治家、企業家などに多大な影響を与えてきた。
そのアリストテレスの著書だという、夫婦のセックスと妊娠に関するハウツー本がイギリスに存在していたようだ。英語版のその愛の指南書、初版は1680年ごろに出回り大人気のハウツー本となったものの、約200年もの間イギリスでは販売が禁じられていたという。しかし1960年代には再び解禁となり、このたび1766年頃に出版されたと思われる大変貴重な1冊が、芸術およびアンティーク作品を扱うスコットランドのオークション会社、「Lyon & Turnbull」に出品されたことを英紙『デイリー・ミラー』電子版が伝えている。
その本が対象としていたのは、経験の浅い助産婦と結婚したての性に関しては未熟な夫婦であり、ヒトの雄雌の体のつくりや妊娠のしくみ、性の快楽についてなどをていねいに紐解いている。特に話題になっているのは、豊かな胸をさらした成熟女性の腹部が大きなユリの花弁のように切り開かれたページ大の挿絵で、頭を下にした胎児がヘソの緒を通じて胎盤から栄養を補給されている子宮内部の様子が描かれ、各パーツについての説明が添えられている。
入札期限は16日。本当にアリストテレス本人の著書であるか否かは残念ながら不明だというが、同オークションの競売人であるブックスペシャリストのキャシー・マースデンさんは、その本についてこう感想を述べている。
「卑猥な印象を抱くようなページはありません。この本では浮気をすると恐ろしい結末が待っているといった警告も示されており、その素晴らしいストーリー展開は今どきの人々のセックス観を変えるかも知れません。」
「17世紀の夫婦に性的快感の大切さを説き、メイクラブをエンジョイしましょう、すべては女性が子供をはらむためですという考えを示していたのは興味深い話です。大分後になって女性がオーガズムを感じなくても妊娠すると分かってくると、女性にとって肉体の悦びはそれほど重要視されなくなってしまったのですから。」
ところで、アリストテレスは“肉体の快楽は刺激の強きものゆえに、他の快楽を楽しむ能力がない人々によって追求される”と説いたとされる。ヒトの寿命がもっと短く、学問や医療の道など研究課題は山積み。何でも理論的に掘り下げようという頭の良すぎる彼の中では、セックスより優先すべきものが後から後から湧き上がっていたはずだ。快楽に溺れている時間すらもったいなかったのであろう。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)