ミュージシャンの槇原敬之が、19枚目のアルバム『Dawn Over the Clover Field』に込めた思いを出演したラジオ番組で語った。彼は前作の『Heart to Heart』では制作期間が東日本大震災前後となったことで、作品にもその影響が強かったという。今回のアルバムは「(Heart to Heartで言いたかったことを)1年で終わらせたくない。伝え続けなければ」といった気持ちで作ったものだ。
『Dawn Over the Clover Field』は「クローバーの野原に夜明けが来た」という意味だ。ドラマ「ゴーイング マイ ホーム」のテーマ曲「四つ葉のクローバー」のアルバムバージョンや、リクルート「タウンワーク」のTVCMソング「バイトが君を待っている」など聞き馴染んだ楽曲も収録される。
12月19日の発売を前に槇原敬之が宣伝を兼ねて、12月10日に福岡のラジオ局「FM FUKUOKA」の番組『モーニングジャム』に出演した。彼は「作曲する時には横にテレビを置いて、ガーガー音を流して“ながら作曲”するパターンだ」といった興味深い話をまじえながら、新作アルバムについて話した。
今回の作品で槇原は、混迷した日本に向けて「これで本当に大丈夫なのか?」と声をあげたかったという。彼はそれをメロディにのせて伝えているのだ。また、「これからの時代はアーティストや文芸界の人たちが活躍して、そうしたことを伝えなければならない」との持論も展開した。
槙原は、例えばビートルズが活躍した時代には旧ソ連は閉鎖的で情報が流れにくい状況だった。しかし、ビートルズのレコードはソ連の国民にも届いたように、音楽は国の壁を越えて何かを伝える力がある。そんな音楽の力が今こそ必要だと説くのだ。
「テレビを見ていると、とんでもない事件が起きている。多くの人はリアルには関係ないので『エーッ!』とそれを見て思うだけ」といった状況の中で、槙原は「誰かがやるのを待つのではなく、自分で声を発したいと思った」と今回のアルバムに収録される楽曲にそんな思いを込めたという。
震災が起きて4か月が過ぎた昨年の7月27日に、槇原は『Heart to Heart』をリリースした。その際のインタビューで彼は「“何ベクレル”とかみんな心配しているけど、たぶんそれを心配するよりももっと違うことを心配した方が良いんじゃないのかな」と話している。『Dawn Over the Clover Field』にはその“もっと違うこと”が示されているのだろうか。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)